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2018 NO.23
よそおう日本
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「美しい」を力に変える人びと
介護現場に化粧療法を
年齢を重ねても、化粧の習慣をもち続けることで心身ともに健康になる。そんなデータが今、高齢化社会を迎えた日本で注目を浴びている。
化粧が認知能力や筋力維持向上にもつながるという研究を進めているのが、資生堂の池山和幸さんだ。
「研究の結果、お化粧をする時に使う手指や腕の筋力は、食事の動作の2~3倍だということが分かりました。また、婦人方が楽しみながらできるお化粧やケアが、知らず知らずのうちにリハビリ効果をもたらすと伝えると、それまで化粧は二の次だと考えがちだった医療関係者たちも関心をもってくれるようになりました」
資生堂が長年開催してきた美容教室の実績をもとに、池山さんは自らがもつ介護福祉士の経験も加えながら、「化粧療法」を開発してきた。このプログラムを導入した介護の現場からは、「認知症の進んだ方でも、表情が明るくなり、自立度が増した」などの、嬉しい報告が相次いでいるという。
現在は、単にお化粧を楽しんでもらうだけでなく、介護予防や、健康寿命(健康上の問題がなく日常生活を送ることができる期間)を延ばすために化粧療法を取り入れる地方自治体も増えている。
「肌のケアやよそおうことは、心身ともに健康になります。『よそおう心をもち続けよう』が、健康長寿を目指す人びとの合言葉になるように、もっと世の中にこのことを知らせたい」
それが池山さんの目標だそうだ。
男たちも美しく
写真●伊藤千晴写真提供●アフロ
日本の男性の美容に関する意識はかなり多様になったとはいえ、その根幹では清潔感が重要視されている。
男性向け化粧品は、髭剃りや整髪といった従来の身だしなみ以外に、近年は用途や種類が増え、肌の汚れを落とす洗顔料、肌荒れを防いだり脂ぎって見えないためのスキンケア用品や、ニキビ痕やしみをカバーするコンシーラー、スポーツ時の屋外での紫外線を防ぐ日焼け止め、体臭を防ぐ制汗剤や制汗シートなども広く愛用されている。
一方では男性向けのエステティックやマニキュアを行うサロンもできて、髭や体毛の脱毛や、マニキュアで爪を美しく整えたいという需要にも応えている。
日本では欧米に比べると香水やオーデコロンを使用する人の割合は少ない。あくまでも清潔、消臭ということが日本の男性の身だしなみの基本となっていて、日本文化の特徴である。
1 クールタイプの制汗シート/2 クールタイプの洗顔料/3 ヒアルロン酸を配合した保湿液/4 しみ・そばかすを防ぐペンタイプの美容液/5角栓を除去する鼻専用パック/6 直塗りタイプの制汗スティック。男性を意識した商品は、手軽に持ち運びのできるものが好まれる