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2017 No.22
東京400年の物語

100年に一度の都市開発に迫る
目次でも紹介した東京の巨大ターミナル駅のひとつ、
渋谷駅周辺では、100年に一度ともいわれる再開発が進行中だ。
再開発を機に、人が主役となるまちづくりを進める渋谷の未来に迫った。
取材協力● 東京急行電鉄株式会社 写真● 名取和久
渋谷 Shibuya 2027
渋谷 Shibuya 2017
上は現在の渋谷駅前。右は2027年の同じ場所の未来予想図。超高層ビルが建つとともに、スクランブル交差点のある西口駅前が整備され、安全で快適な街が実現する。超高層ビルの屋上には屋外展望施設も
図版提供=渋谷駅街区共同ビル事業者
常に新しいファッションや流行を生み出し、近年ではIT企業が集まる都内有数のオフィス街ともなっている渋谷。さまざまな顔をもつこの街では、現在駅周辺で7つの開発プロジェクトが進行し、2020年までに4棟の超高層ビルが完成予定。日本のクリエイティブ産業をさらに活性化させるため、新しいビジネスやカルチャーを生む人材が集まる街を目指している。
なかでも大きく変わるのが、駅周辺の動線。これまで9路線が乗り入れ、地下5階から地上3階まで各線のホームが分散して、迷路のようになっていた構内は、JR埼京線と東京メトロ銀座線のホームが移動し、現在よりもスムーズな移動が可能になる。地下深くから地上のビルへの移動も大幅に改善し、小さな子供を連れた人や、お年寄りなどにも安全で快適な空間へと変わっていく。
東京には渋谷のほかにもさまざまな魅力的な街がある。そのなかで渋谷を「日本一訪れたい街にしたい」というのも、現在のまちづくりのテーマだ。20世紀半ばから渋谷のまちづくりを主導してきた東京急行電鉄(東急)・都市創造本部の山口堪太郎さんが語る。
「渋谷駅から一駅ほどの距離には、原宿、青山、代官山、恵比寿といった流行に敏感な若者たちに人気の街が揃っています。そこまでを楽しく歩けるように、官民が連携して渋谷川沿いに遊歩道を整備したり、街の中間に、人がくつろげる広場のある施設を設けたりして、より広い地域で“渋谷圏”を楽しんでもらう計画を進めています」
超高層ビルが建ち並ぶだけでなく、水や緑があふれ、歩いて楽しく、居心地の良い街を目指す渋谷。それは街の主役が、ビルから人へと移っていくことにもつながるはずだ。さまざまな年齢、国籍、職業、趣味をもった人々が訪れたいと思う街には、多様な価値観があふれ、新しい文化や産業が巻き起こる。次の100年へ向け、新たなエネルギーが集積する街へ。渋谷の未来が見えてきた。
水害を防ぎ、渋谷ならではの安全を
水や緑の空間を復活させるために、渋谷川を中心とした整備を進めている渋谷。しかし、谷地形の底に位置する渋谷では、水への対策が喫緊の課題だった。近年は「ゲリラ豪雨」と呼ばれる、1時間あたり50㎜以上の強さの突発的な豪雨が発生することがあり、そのたびに、谷底の駅前では対応に追われていた。
対策として東口駅前の地下で建設中なのが、集中豪雨の際に街の浸水被害を軽減する地下貯留槽。東急の都市創造本部で、貯留槽をはじめとする渋谷駅街区の土地区画整理事業を統括する森正宏さんが整備の概要を語る。「まず駅前の地下を流れている渋谷川の流れをずらし、地下広場を整備します。さらにその下の地下25mという一番深い場所に、約4000㎥の雨水を貯留できる貯留槽を建設しています。地下鉄の駅や渋谷川、ビルに囲まれた場所にあるここに、豪雨時の雨水が溜まり、地下街の浸水被害を防ぐ仕組みとなっているのです」
毎日約300万人以上が利用する渋谷駅の機能をストップさせずに工事するには、場所によっては終電から始発の間の2時間ほどしか作業ができず、緻密な工程管理が必要になる。世界有数の巨大ターミナル駅だからこその制約にも負けず、今も工事は進められている。
現在進行中のこれら再開発プロジェクトは、2020年の東京オリンピック・パラリンピックまでの整備をいったんの目標にしながら、すべてが完成する予定は2027年。その時の渋谷は、さらに世界中から注目される街となっているはずだ。
東京マップ2017
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