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2016 No.19
四季を愛でる国 ニッポン
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四季と共存する先進の省エネルギー住宅
――昔ながらの日本家屋の知恵を、LCCM住宅に織り込む――
季節に合わせた「衣替え」の手法
住み手が多様なスクリーンを動かして、季節ごとに居住環境を整える。
LCCM住宅デモンストレーション棟には、日本の伝統的な考え方を生かした仕組みがちりばめられている。
衣を重ねる
何層にも重ねた可動のスクリーンは、それぞれ異なる機能を持つ。
例えば冬の昼間は、窓ガラスのスクリーンを全て開ける。穏やかな日差しを取り入れ、縁側の黒いタイルに熱を蓄えるためだ。夜は断熱スクリーンを下ろして、暖かい空気を閉じ込める。夏には木製ルーバーを閉めて、強烈な日差しが差し込むのを防ぐ。
細い木材を並べたルーバーや、柔らかな光を透過する素材で構成されたスクリーンは、格子戸や障子などに通じる日本的な美を備えている。
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左:縁側の両側に複数のスクリーンが並ぶ。窓沿いに断熱スクリーンと可動式木製ルーバー、リビングとの間に縦格子のガラス戸を設置/右:断熱スクリーンは、熱を逃さないように二層のハニカム構造になっている(写真=楠聖子)
空間を分ける
障子や襖の開け閉めで、空間を分けて暮らす伝統的な日本家屋のように、この住宅でも可動間仕切りによって、空間を多彩に有効利用している。
空間分割は、省エネルギー化にも一役かっている。間仕切りを閉めると冷暖房を効かせる空間が小さくなり、エネルギーの消費量が少なくて済む。縁側とリビングの間仕切りは、夏に閉じると熱くなった縁側の空気を遮断でき、冬は開け放しにすると縁側の暖かさをリビングに呼び込める仕組みだ。
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左:連続した空間を引き戸で区切ることができる/右:2階の寝室はスクリーンを下げると落ち着いた環境の「就寝モード」に切り替わる(写真=楠聖子)
● 季節と時間のモード図(提供=小泉アトリエ)
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風を通す
春や秋には、心地良い空気を積極的に室内に取り入れる。
建物の東西に設けた窓は、春や秋によく吹く風が入りやすい向きに開く。縁側の床タイルを外して取り替え式の格子をはめると、地面を吹き抜ける涼風の取り込み口となる。
外から取り入れた空気は、吹き抜けを通って換気塔から屋根の外へと流れ出る。屋根は風を誘発する形状に仕上がっている。建物全体が、効果的な通風を生み出す装置になっているのだ。
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左:東西方向からの風の取り入れ口となる縁側両端の窓。より多くの風を取り込めるように壁に角度を設けている/右上:床下から風が入るよう縁側の床につくられた取り替え式の格子/右下:玄関上の換気塔。暖かな空気を閉じ込めたい時は手動のスクリーンを閉める(写真=楠聖子)
LCCM住宅デモンストレーション棟/ デザインコンセプト
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提供=小泉アトリエ
①太陽光発電パネル+太陽熱温水器集熱パネル
②冬季のダイレクトゲインを考慮した南面大開口
③光と風を取り込むパラボラ状の壁形状
④地域木材等の利用
⑤高炉セメントコンクリート使用
⑥空気の流れを作り出す換気塔
⑦LED照明の多灯分散配置
⑧高効率HPエアコンによる部分間欠冷暖房
⑨日射を遮蔽する木製ルーバー
⑩高効率給湯器・燃料電池等