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2016 No.19
四季を愛でる国 ニッポン
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四季と共存する先進の省エネルギー住宅
――昔ながらの日本家屋の知恵を、LCCM住宅に織り込む――
家を建て、暮らし、最終的に取り壊すまでの二酸化炭素の収支がマイナスになる住宅をライフサイクルカーボンマイナス(LCCM)住宅という。日本家屋の伝統的な考え方を生かしながらLCCMの実現を目指すのが、このデモンストレーション棟だ。
写真:楠聖子・アマナイメージズ・PIXTA 協力:国立研究開発法人建築研究所・小泉アトリエ
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茨城県つくば市国立研究開発法人建築研究所内にあるLCCM住宅デモンストレーション棟(写真=楠聖子)
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国立研究開発法人建築研究所上席研究員の桑沢保夫さん。LCCM住宅デモンストレーション棟では、エネルギー消費量に関する設計と計算を担当した。「計算では、30年以内にCO2の収支がマイナスになる」と桑沢さん。
エネルギー消費量やCO2(二酸化炭素)排出量の削減は、日本の家づくりにおいても解決すべき重要なテーマだ。茨城県つくば市に建つ実験住宅「LCCM住宅デモンストレーション棟」では、太陽光発電や蓄電池をはじめとする先進の設備機器を備え付けて、エネルギーの創造と消費エネルギーの削減を行っている。
とはいえ、たくさんの設備機器を設置しただけの住宅ではない。あえて人の手を使い、自分たちで調節しながら、自然と上手に付き合っていく住まいの在り方を提案しているのが特徴だ。
ここでは、引き戸やブラインドをはじめとする可動スクリーンを省エネルギー化に活用する。「季節や天気に合わせて住み手が建具を開け閉めし、その時々に快適な室内環境を生み出していく。あたかも建物を衣替えするようにして四季の変化に対応する手法には、日本の伝統的な暮らしの知恵が生かされている」。建物の計画に参加した建築研究所上席研究員の桑沢保夫さんはそう話す。
昔ながらの日本家屋では、縁側越しに室内と屋外がつながっている間取りがよく見られる。大きな間戸(柱と柱の間にある開口部)を通して外の風景を楽しみ、心地良い風を室内に取り込む。障子や雨戸を開け閉めして、光や風雨が入ってくるのを制御する…。このように日本人は、四季の変化を積極的に受け入れながら日々の生活を営んできた。
「衣替え」を取り入れたLCCM住宅デモンストレーション棟でも、光や風と折りあいながら暮らそうとする姿勢は変わらない。ここに、日本らしい省エネ住宅の姿がある。
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特徴の一つである可動スクリーン(写真=楠聖子)
緩やかなつながりを楽しむ日本の家屋
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写真=アマナイメージズ