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2014 No.14
街歩きにっぽん
写真●伊藤千晴、西山昌吾 地図制作●尾黒ケンジ 協力●西村屋本館、そば藤
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ライトアップされた城崎・愛宕橋
兵庫県北東部の豊岡市城崎町にある城崎温泉は、関西随一の温泉郷として知られる。
温泉の湧出は1300年前、古来湯治場として栄え、また文豪の小説の舞台となるなど、さまざまな人々に親しまれ愛されてきた。
城崎温泉で名高いのは、7つある外湯である。外湯とは、旅館などの宿泊施設を伴わない公衆浴場のこと。町の中心を流れる大谿川をはさんで点在する外湯は、それぞれに由来や自慢の風呂があり、お気に入りを見つけるのも楽しい。散歩に出かける時には、当地で「正装」とされる浴衣(素肌に直接着る和服)と下駄(歯のついた木の台に紐をつけ足指をかける履物)を着用したい。夕方になると大谿川沿いはライトアップされ、柳並木と川に架かる太鼓橋を美しく照らし出す。しっとりと輝く光に包まれながら、浴衣姿でそぞろ歩きながらの外湯めぐりは、身も心もほぐれる至福の時間である。
また大谿川沿いには、古くから多くの旅人を迎えた老舗旅館をはじめ、数々の旅館が立ち並んでいる。外湯めぐりはもちろんだが、旅館の中につくられた内湯も、内装などが工夫されているところが多い。
この地のもう一つの楽しみは冬の味覚の王、カニ。ことにこの地方で獲れるズワイガニは松葉ガニと呼ばれ、たっぷりした身と上品な甘みが堪能できる。
日中には、外湯の一つ、「鴻の湯」そばのロープウェイで大師山の山頂まで登ってみるのもおすすめだ。展望台から見おろす温泉街と遠くに見える山並み、日本海へと流れる円山川は、季節や気候によって豊かな表情を見せてくれる。
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町なかを浴衣と下駄で散歩する人の姿が目立つ
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創業150年の旅館「西村屋本館」は、温泉も料理も充実している
左/木の香りが清々しいヒノキの風呂
右/見た目も美しい料理の数々。名物の但馬牛(兵庫県産の黒毛和牛)とカニを味わいたい