日本人の暮らしと弁当
作り手と食べる人をつなぐコミュニケーション・ツール
弁当は学校や会社などのほか、お花見やピクニック、家庭の簡単なもてなしや大人数の会食にも多く利用されます。
日本の学校では、昼食に給食(学校が提供する食事)が出るところと、弁当を持っていくところがあります。社会人でも、会社などの職場に弁当を持っていく人は少なくありません。自分で弁当を作る人もいますが、親やパートナーが作ってくれることもあり、その場合、弁当を食べながら作った人の気持ちに思いをはせることもあるでしょう。弁当は作り手と食べる人のコミュニケーションの役割も果たしているのです。
増え続ける弁当の販(はん)売
一方、デパート、スーパーマーケット、コンビニエンスストアなどでも弁当が売られるようになり、弁当の専門店もできました。定番の幕の内弁当やのり弁当のほか、中華(か)弁当、洋食弁当など豊富な種類の弁当が売られています。また飲食店でも、日本料理店に限らず、さまざまなレストランが持ち帰り用に弁当を作って売り出しており、レストランのシェフの味を自宅でも手軽に楽しめるようになりました。
明治時代(1868年~1912年)に駅で売られるようになった弁当「駅弁」の数は、今では全国で2,000とも3,000とも言われ、幕の内弁当、おすしのほか、各地の名産品を使った郷土色豊かな弁当が味を競い合っています。かつて列車が駅に着くと、プラットフォームで待っていた弁当屋さんが、弁当を入れた箱を首から下げて列車の窓越(ご)しに弁当を売りに来ました。今は鉄道もスピード化し、新幹線や特急列車などの窓の開かない電車が増えたため、停車駅の窓から駅弁を買う楽しみは失われましたが、駅の売店や車内販売で買う駅弁は、日本人にとって今でも列車の旅の楽しみの1つです。