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2014 No.13
日本のシンボル、富士山
富士の神秘にふれる
体験! エコツアー
富士山のまわりには、大昔にあった噴火のなごりがあちこちに見られるが、
北西麓に広がる森「青木ヶ原樹海」もそのひとつ。
エコツアーで、激しい火山活動の跡がしのばれる地形や洞窟、
ユニークな植生など、富士山の自然の神秘を体験しよう。
富士山は、これまでに何度も噴火によって周辺の地形を変えてきた。北西麓に位置する青木ヶ原樹海も、貞観噴火(864年)で流れ出した溶岩が固まってできた、標高約900~1300m、広さ約3000haの広大な森である。
樹木が多く深い森であるため、昔から「なんとなく恐ろしい」「入ったら出られない」といったイメージを持たれることが多く、日本人でも実際に足を踏み入れた人は少ない。だが、最近は豊かな自然環境が注目され、気軽に楽しめるエコツアーが人気になっている。富士河口湖町公認ネイチャーガイドである栗林秀旭さんのガイドで森の中へ入ってみた。
溶岩の上に最初に生えるのは、地衣類(菌類と藻類の共生体)だ。次にコケ、そして草が生え、少しずつ、土が形成される。青木ヶ原樹海が世界的に珍しいのは、土の深さが10㎝程度の状態なのに、樹木が生えていること。それを可能にしたのは富士山の南にある太平洋の存在だ。海から常に湿った空気が流れてくるためにコケが育ち、コケの保水力を利用して樹木が育つことができたのだ。
生えている樹木の約8割を、常緑樹のヒノキとツガが占める。土が深くないため根が横に伸び、地面は露出した根でデコボコしている。そして樹木がある程度まで伸びると、根は幹を支えきれずに倒れる。だから、樹海の木の高さは、ほぼ一定に保たれることになる。
森の中は湿気が強く、木の濃い香りがする。多少の雨なら密集する樹木のおかげで傘をささずに歩ける。森林浴にいい場所だ。歩いて30分ほどで、全長230m以上、地上との高低差が最高約20mの「富士風穴」に着く。風穴とは、溶岩内のガスが溶岩を突き破ってできた洞窟のこと。ここは夏でも氷が見られる。江戸時代初期(17世紀)、当時の将軍・徳川家康は、風穴の氷を江戸(現在の東京)まで運ばせたと、地元では言い伝えられている。真っ暗な穴を手探りで下り、30mほど進むと、地面も壁も凍っており、水晶のような氷柱が現れる。絶えず染み出す富士山の伏流水が凍ったものだ。水が気化する際に周囲の温度を下げるため、気温は夏でもマイナス2℃、冬にはマイナス15℃にもなる。
青木ヶ原樹海を抜け、大室山に入ると、まず足の感触が変わった。溶岩がむき出しの樹海の道は固いが、ブナ、ミズナラなど落葉広葉樹が多い大室山は、葉や土が堆積し、歩道が柔らかいのだ。日差しも明るく差し込んでくる。
栗林さんは言う。「私は富士山が好きで、もっと富士山のことが知りたくなってガイドの仕事を始めました。青木ヶ原樹海も富士山の一部。この樹木の生命力、素晴らしさをエコツアーでぜひ実感してほしいですね」
富士山がつくりだした青木ヶ原樹海。そこは自然の神秘を感じられる、美しい原始の森だった。
青木ヶ原樹海エリア地図
富士風穴は手つかずの自然が残る貴重な場所で、入るには許可が必要(エコツアーに申し込めば、主催者が申請してくれる)。鳴沢氷穴、富岳風穴は観光用に整備されている。
●問い合わせ
冨士エコツアー・サービス
http://www.fuji-eco.com/
(日本語のみ)
富士風穴・大室山を巡るコースの他、富士山に登るエコツアーもある
富士河口湖総合観光情報サイト
(英語・中国語・韓国語)
http://www.fujisan.ne.jp/nature/