日本の学校には、先生と生徒が連れ立って教室から離れた場所に行き、様々な学習を行う学校行事「移動教室・修学旅行」があります。
日頃の授業とは違った特別な経験ができるため、小・中学校、高校の生徒たちの良い思い出になっているようです。今回、「移動教室・修学旅行」について紹介します。
日本の学校の「移動教室・修学旅行」
左:修学旅行先として大人気の日本の首都・東京にある浅草寺の雷門。右:広島平和記念公園。周りに広島平和記念資料館があり平和学習の代表的な場所として知られています。
「移動教室・修学旅行」とは、先生の引率のもと生徒たちが学校から離れた場所に行き学習をおこなう学校行事のことです。
生徒たちは、その土地でしか見られないものを見たり、そこでしかできない体験に挑戦したりして様々なことを学びます。
また、自分たちで計画を立て、グループで行動することで、協力して行動することの重要性を感じとることもできます。
例えば、広島県の呉市の高校の生徒たちは、九州の熊本県へ修学旅行に行きました。
仲間たちと高速鉄道の新幹線に乗って移動し、現地で地元、呉と同じように自然災害で傷ついた場所を視察することで防災や地域への理解を深めました。
また、仲間と食事や宿泊などの生活を共にすることで、日頃は感じることのできない仲間の良さを見つけ合うことができます。学生時代の良い思い出をつくることも修学旅行の醍醐味といえます。
左:防災学習の一環で熊本県を訪問。2016年に起きた大きな地震で壊れた部分の復旧がすすむ熊本城の歴史を学び、見学。右:仲間たちと楽しく昼食。(写真提供:広島県立呉三津田高等学校)
歴史や文化を学ぶ
左:京都にある世界遺産「清水寺」を見学。右:サムライや忍者の装備を体験し楽しむ生徒。(写真提供:野田学園高等学校)
今も昔も修学旅行先として最も多く選ばれているのは、かつて日本の首都だった京都です。
京都は1200年以上の歴史があり、宮廷文化や武家社会が栄えていた頃から残る古い神社やお寺など歴史的な建造物が数多くあります。
歴史ある京都への修学旅行の前に、学びのテーマに合わせて準備をする「事前学習」を行った学校の様子を見てみましょう。
本州にある山口県の高校では「歴史や文化を後世に残す」をテーマに修学旅行が行われました。
事前学習では神社仏閣に使われている塗料を作って絵を描き、京都への修学旅行では京都の芸術大学を訪れ、「文化財修復」についての講演を聞き、ワークショップを行いました。
こうした経験により、京都の歴史遺産や文化遺産を維持するために大学が重要な役割を担っていることや、遺産を守る人々によって京都が魅力的な町として存在していることを学びました。
事前学習の様子。石を砕いて粉にし、膠で溶いて絵の具をつくり彩色。(写真提供:野田学園高等学校)
修学旅行では、京都の芸術大学で講演を聞いた後、和紙で蝶番をつくり小さな屏風を作成。(写真提供:野田学園高等学校)
貴重な体験をする
日本の伝統芸能の能楽を体験する学校もあります。
広島県の尾道市にある小学校の生徒たちは、事前学習として能楽師の先生から指導を受けた後、京都への修学旅行で能舞台を鑑賞し、実際に使われている舞台に立って稽古をしました。
また、修学旅行後には伝統芸能発表会として、その成果を保護者の前で披露します。こうした体験によって、生徒たちは日頃の所作を意識するようになり、伝統芸能を実際に見て、触れて体験することの素晴らしさを感じたようです。
修学旅行で能楽師に指導を受けている生徒。
京都の能楽堂「嘉祥閣」で能舞台を鑑賞。(写真提供:尾道市立久保小学校)
生徒たちが体験した京都にある能楽堂の舞台で、能楽師が演目「賀茂(かも)」を舞っている様子。顔には能面の大飛出(おおとびで)がつけられている。(写真提供:一般財団法人能楽堂嘉祥閣)
現地の人たちとの交流
東京の高校の生徒たちは、北海道の小さな町で地域の人たちと交流して、環境やサスティナビリティについて学習しました。
旭川空港の近くにあり人口が増加している東川町では、移住者から話を聞き、北海道の先住民族アイヌの伝統的なアイヌ紋様を学ぶワークショップを体験して、町や北海道の文化への理解度を高め、グループごとに町を盛り上げるプランを提案しました。
自然豊かな下川町では、林業の施設や循環型エネルギーの発電所などでの町の人たちとの交流から、持続可能な社会や町づくりを考えました。
生徒たちは現地でしか出会えない人との交流をしたことで、より身近なこととして「町おこし」の重要性を実感し、「よりよい社会」について探究することができたようです。
北海道の先住民族アイヌの伝統的な柄を切り絵で表現する生徒たち。(写真提供:駒場学園高等学校)
下川町にある日本の正月飾りの門松を作っている施設を見学。(写真提供:駒場学園高等学校)
海外修学旅行
ハワイの自然や現地の学校との交流を満喫。(写真提供:福岡県立福岡中央高等学校)
修学旅行では、国内だけでなく、海外に行く学校もあります。
九州にある福岡県の高校の修学旅行先はアメリカのハワイでした。
生徒たちは日本からハワイの旅行先のダイヤモンドヘッド登山などを英語で予約するところから準備しました。
現地では自分たちが計画したプランにそって、環境学習などのグループ研修を行いました。
普段の教室を飛び出して、ハワイの自然を体感することで思いきりリフレッシュできたようです。
また、現地の生徒と交流するイベントもあり、外国語を使って海外の同世代と会話したことがグローバルに視野を広げることにつながりました。
左:カメハメハ大王像の前で記念撮影。右:ハワイのワイパフ高校で日本の昔遊びをして楽しむ交流風景。(写真提供:福岡県立福岡中央高等学校)
このように日本の学校の生徒たちは「移動教室・修学旅行」で普段とは異なる学習体験をすることで、社会を新たな視点で捉えたり、仲間たちと学生時代のより良い思い出をつくったりして、生きる力を育んでいます。