最近、日本の駅でもよく見かける、丸いカプセルが詰まったハンドル付きの小さな自販機。これらは子どもだけでなく、大人も夢中になってしまうカプセルトイのマシンです。ハンドルを回して、カプセルが出てくるときに「ガチャッ」と音がすることから、‟ガチャガチャ”と呼ばれています。1個100~500円のカプセルトイですが、マシンは今や日本中に70万台もあると言われ、ここ10年で売上げも1.5倍の400億円になりました。
昔は男の子の憧れ、今は大人の女性も夢中に
1965年に日本にカプセルトイを紹介したペニィ商会の10円マシン。(写真提供:株式会社ペニイ)
1970年代前後のカプセルトイ。(写真提供:日本ガチャガチャ協会)
日本のカプセルトイの歴史は1965年に始まります。アメリカで小さなオモチャ入りガムやピーナッツの自動販売機が大ブームになり、その小さなオモチャが日本で作られていたことから、東京のある会社がアメリカからマシンを輸入し、駄菓子屋さんなどの店先に設置しました。10円で小さなオモチャと、何が出てくるかわからないワクワク感が手に入る!と当時の子どもたちは夢中になりました。
キン肉マン消しゴム、通称“キンケシ”は1980年代に大ヒット。
1994年に発売開始された「HGシリーズ ウルトラマン」は緻密な細工に目を奪われる。(写真提供:日本ガチャガチャ協会)
カプセルトイは何度かのブームを経て、現在では専門店や駅、空港の一角にマシンを集めたコーナーができるほどの人気になりました。漫画キャラクターをかたどった消しゴムが大ヒットした第一次(1983年)、特撮ヒーローやアニメ映画キャラクターが登場した第二次(1995年)、コップの縁に腰掛ける女の子のキャラクターが面白いとSNSで大人気となった第三次(2012年)、そして、大人でもつい回したくなるようなスタイリッシュな北欧家具や食をテーマにしたもの、また真珠のアクセサリーなど女性向けの商品も開発されてヒットし、第四次ブームとなっています。(出典:日本ガチャガチャ協会)
左:SNS時代の女性を魅了した、ワーキングウーマンシリーズ。大人をターゲットとしたカプセルトイの先駆け的存在だ。(写真提供:キタンクラブ)
右:手の上で北欧を感じてほしいとの想いで作られた北欧家具のガチャ「アルテック 北欧家具 ミニチュアコレクション〈アルヴァ・アアルト〉シリーズ」©Artek(写真提供:タカラトミーアーツ)
真珠養殖で有名な愛媛県で作られた「あこや真珠ガチャ」。1000円で本物の真珠アクセサリーが手に入る。(写真提供:宇和海真珠))
カプセルトイの魅力。観光客のお土産としても人気!
カプセルトイの魅力は、精巧にできているミニチュアをコレクションしていくことです。例えば子どもが昆虫採集を楽しむ夏に向けて発売されるカブトムシなどの昆虫のミニチュアは、100円とは思えないリアルなつくりです。また、1シリーズに5~6種類のアイテムがあるため、すべてを揃えて楽しむ人も多くいます。
毎夏発売される昆虫のミニチュアシリーズは32年続くロングヒット商品。(写真提供:タカラトミーアーツ)
擬人化した猫のカプセルトイも人気。(写真提供:株式会社エール)
こうした昆虫や動物をリアルに再現したものもあれば、人間のようにポーズをとる、日本らしいユーモアにあふれた動物や、日本各地の名所や名物をミニチュアにしたカプセルトイもあり、観光客にも人気です。また、空港では、残った日本の小銭を使い、旅の最後の思い出として、カプセルトイマシンを利用する人もいます。
成田空港にずらりと並ぶガチャ。(写真提供:タカラトミーアーツ)
左:東京・浅草の仲見世((C)浅草観光連盟 (C)KAIYODO)。右:浅草の名物料理・どじょう鍋を精巧に再現したミニチュア((C)どぜう飯田屋(C)KAIYODO)(写真提供ともに株式会社ケンエレファント)
電車玩具「プラレール」をカプセルサイズにデフォルメしたカプセルトイ。ゼンマイ動力で専用のレールを走らせることができる(写真提供:タカラトミーアーツ)
© TOMY
子どもだけが楽しむものから、大人まで夢中にさせるものへと進化したカプセルトイ。精巧さに目を見張るもの、思わず笑ってしまう楽しいものまで、現在、各メーカー合わせて毎月250種以上のバラエティ豊かなカプセルトイが誕生しています。日本らしいユニークなテーマや視点が、この小さなカプセルの中に詰まっているのです。