絵師、彫師、摺師が協力して作り上げる
浮世絵は1人の手によって生み出されるものではありません。絵を描く人、彫る人、摺る人の3人が協力し合って初めて、1つの作品が完成するのです。
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まず絵師が、墨の線で下絵を描きます。
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次に彫師が、下絵を山桜の木の板にはり、絵がらを彫って、主版(おもはん)という版木を作ります。これは黒1色の輪かく線を摺るためのものです。
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色ごとに分けて版木を彫り、それぞれの色の色板を作ります。
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絵師の立ち会いのもとで、版画を摺る摺師がそれぞれの版木に色をつけていきます。
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各版木には、同じ位置に印がつけられており、摺師は色を重ねていくときに、印刷紙の決められた場所をそれぞれの版木の印にあてがって摺ります。そうすれば、ずれることなく仕上げていくことができます。
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色を重ねていくときの手順は、「淡(あわ)い色から濃(こ)い色へ」、そして「小さな面積から大きな面積へ」が原則です。
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仕上げにボカシと言われるグラデーションを入れ、完成です。
(1)これが墨線(すみせん)と呼ばれる主版を摺ったものです。この絵に色が重ねられて、浮世絵ができあがります。
(2)波にゆれている船の色を重ねていきます。木製の船なので、それにふさわしい色を重ねます。
(3)波間の船に色がつき、船の形が明らかになってきました。最初の絵とのちがいが分かりますか?
(4)船の船首とへりの部分にある、黒っぽい色を重ねます。
(5)船にはっきりと色がつきました。
(6)次は空の色を重ねます。空は少し赤みがかっています。
(7)空に色がつくと、絵の印象がずいぶんと変わります。
(8)さらに空に色をつけます。空は少しくもりぎみです。
(9)空に2つの色がついたことで、絵におくゆきが出てきました。
(10)次に富士山の周りに暗い空の色を重ねて、強調させます。
(11)遠くに見える富士山が、くっきりとうかび上がりました。
(12)次は波の色を重ねます。絵に変化を持たせるため、2種類の色を使います。
(13)波の色を増やすことで、大波に動きが感じられます。
(14)最後に、波の濃い青色を重ねます。
(15)これで浮世絵の完成です。
((公財)アダチ伝統木版画技術保存財団)