着物の形と種類
布を全て使いきる
着物の作り方は、とてもユニークです。縦の長さ12〜13メートル(約39〜43フィート)、横はば36~40センチメートル(約14〜16インチ)の生地を8枚に裁断し、それらを縫い合わせて着物の形を作りますが、布は切り捨てずに全て使いきります。また、素材は絹が中心ですが夏の着物である浴衣には木綿なども使われます。
織りと染め
着物の生地には大きく分けて、「織り」と「染め」があります。織りの着物は染めた糸を織って生地にしたものです。あらかじめ染めた糸を織ることで柄(がら)を形作っていきます。代表的なものとしては、鹿児島県の奄美大島が産地で、光沢(たく)があり丈(じょう)夫な大島紬(おおしまつむぎ)や、軽くて300年以上使用できると言われるほど丈夫な、茨城県結城市で生産される結城紬(ゆうきつむぎ)などがあります。
染めの着物は白い生糸を織って生地にし、後から模様を手描(が)きしたり、刺(し)しゅうをほどこしたりして華やかな色彩(さい)に染めあげたもので、代表的な染めの着物には、何百色という色を重ねて染めあげる豪華(ごうか)な色彩が特ちょう的な京都府の京友禅(きょうゆうぜん)や、石川県金沢市で生産され、花鳥風月などの写実的な柄が特ちょうの加賀友禅(かがゆうぜん)などがあります。
くり返し着ることができる
織りの着物の場合は、表と裏が同じ組織なので、表の色が変色したら裏返しにして使えるというメリットがあります。また染めの着物も、色が派手に感じたり、あせたりしたら上から色をのせられるので、半永久的にくり返し利用できます。それも、1枚の布を8枚に裁断して仕立てるという着物の作り方が合理的だからだと言えるでしょう。
帯
着物には帯が欠かせません。帯は体の前で合わせた着物を美しく安定させるためのもので、実用と装飾(しょく)を兼(か)ねています。表面だけに模様があしらわれたふくろ帯と、帯の中心のはばが半分にしてあり体に巻きやすい名古屋帯の2種類が有名です。長さはふくろ帯が4メートル20センチ程度(約14フィート)、名古屋帯が3メートル50センチ程度(約12フィート)、はばはどちらも30センチメートル(約12インチ)前後です。帯の作りでは西陣(じん)織と呼ばれる京都府産の織帯が、金や銀などの華やかな色使いで有名で、ほかにも博多献上(はかたけんじょう)と呼ばれる福岡県で生産される帯もよく知られています。
帯の結び方
帯の結び方もさまざまありますが、太鼓(たいこ)結びという結び方が最も一般(ぱん)的です。結びの部分に帯枕(おびまくら)というクッションを入れて、背中にボリュームを持たせるのが特ちょうで、江戸時代(1603年〜1867年)の末期から流行したものです。それまで帯の結び方は前で合わせた着物がはだけないようにと押(お)さえることだけが重要だったのですが、次第に見た目にも美しい結び方が広まっていきました。
(世界文化社)
着物に合わせる小物など
明治時代(1868年〜1912年)に入ると、帯の型をこわさずに、より色彩豊かに見せるため着物と帯の間に結んで帯枕のひもなどをかくすための帯揚(あ)げや、帯がくずれないように固定する帯締(し)めといった小物が登場し、その色合わせが着る人のセンスの見せどころとなりました。
また、ほかにも着物の着こなしに欠かせないものとして、衿(えり)元を引き締め、汚(よご)れを防ぐために着る半衿や、足を小さく見せ、親指とほかの指を分けた形の足袋(たび)などがあり、色は白を使うことが着物姿を美しく見せる基本の着こなしとなっています。
帯締めや髪(かみ)留めは着物をおしゃれに着こなす上で重要なアクセサリーです。
(世界文化社)