美術館で、日本に伝わる「妖怪」を見て、聞いて、さらに遊んでみよう。
あなたは日本で、夜にひとりで歩いています。すると、ふとゾクッとして、さむけがします。だれかに――それとも何かに――見られている気がする……?
もしかしたら、あなたは「妖怪」とよばれる、ふしぎでこわい“もののけ”に出会ってしまったのかもしれません。日本では、何世紀もの間、人々にこのふしぎな妖怪たちのお話が伝わってきました。妖怪にはおもしろいものや、ちょっとこわいもの、いたずらが大好きなものもいます。それらの性質や特徴を知っておくと、どんな妖怪がいるのかを見分けられます。日本の妖怪はテレビや漫画、ビデオゲームにもよく出てきて人気があります。実際に妖怪と出会える美術館もあります。
妖怪とは?
妖怪は日本の豊かで想像力あふれる昔話をうつし出すものです。
妖怪は日本の豊かで想像力あふれる昔話をうつし出すものです。
妖怪は、日本の昔話に登場するふしぎな存在です。見た目も大きさもさまざまで、動物に似ているもの、私たち人間にそっくりなもの、なかには今まで見たことのない姿をしているものもいます。
たとえば「河童」は、サルとカメを混ぜたような見た目で、普段は川に住んでいて、きゅうりが大好きです。「ぬりかべ」は大きな透明の壁で、よく旅人のじゃまをします。「ぬけくび」は普段は人と同じように見えますが、夜になると首がぬけて飛び回り、食べものを探します。その食べものは……あなたかもしれないので気を付けて!
河童(左)、ぬりかべ(中央)、ぬけくび(右)。これらは日本にいる何千もの妖怪 のほんの一部です。
河童(左)、ぬりかべ(中央)、ぬけくび(右)。これらは日本にいる何千もの妖怪 のほんの一部です。
昔の人々は妖怪が天気を変え、物を消すことさえできると信じていました。その時代の絵師は本や巻物に妖怪の姿を描き、役者はお芝居でこの不気味な妖怪を演じました。こうした妖怪のお話は、作物がよく育たなかったり、病気になったりという身の回りに起こるふしぎなことを妖怪のせいとしていました。今でも妖怪は、日本文化にとって大切なものです。妖怪はよくテレビや漫画、ビデオゲームにも登場し、私たちをこわがらせ、笑わせ、時には助けてくれることもあります。ひとつひとつの妖怪に物語があり、このふしぎさと楽しさがあるからこそ、今でも多くの人に愛されているのです。
妖怪美術館に行ってみよう!
小豆島の「妖怪美術館」では、夜(左)でも昼(右)でも妖怪に出会えます!
小豆島の「妖怪美術館」では、夜(左)でも昼(右)でも妖怪に出会えます!
本当に妖怪に出会えたらどうでしょう。日本には、生き生きとした妖怪がいる美術館があります。
香川県の小豆島にある「妖怪美術館」では、なんと900体以上の妖怪に出会えます。スマホでちょっとこわい妖怪の話を聞きながら歩ける迷路や、勇気があれば夜に懐中電灯を持って美術館を探検することも。その角を曲がった先に何が待っているかは……だれにもわかりません。
巨大な妖怪の中に入って、探検することもできます!
巨大な妖怪の中に入って、探検することもできます!
もちろん、ここは昼間でもとっても楽しい場所です。古い建物のあちこちに彫刻や展示、アートがちりばめられています。落ち込んだ気分を食べてくれる妖怪「カカ」、寝ている間にだれかとの顔を入れ替える妖怪「トリカエッコ」、さらにはSNSの「いいね!」を集める妖怪など、とても今っぽい妖怪にも出会えるでしょう。
妖怪の世界に飛び込もう
名古屋・金山南ビルで開催された「YOKAIImmersiveExperienceExhibition」では、光や音、最新技術によって妖怪に命が吹き込まれました。(写真提供:YOKAIImmersiveExperienceExhibition)
名古屋・金山南ビルで開催された「YOKAIImmersiveExperienceExhibition」では、光や音、最新技術によって妖怪に命が吹き込まれました。(写真提供:YOKAIImmersiveExperienceExhibition)
名古屋では、妖怪の世界をとても楽しい仕掛けで体験できる展示会も開催されました。大きな会場には動き回る妖怪がたくさん映し出されていました。なかには等身大の妖怪や巨大な妖怪、かっこいい光や音の演出によって、空中を漂ったり突然飛び出してきたりする妖怪もいました。まるで生きている妖怪の世界の中を歩いているような体験ができる場所でした。
展示会では、妖怪があなたの周りで踊り回り、展示から飛び出してあなたに挨拶することも!
展示会では、妖怪があなたの周りで踊り回り、展示から飛び出してあなたに挨拶することも!
展示会では踊る鬼や「からかさ小僧(傘の妖怪)」、道具が妖怪に化けたものにも出会えました。最新技術によってつくられたものだということを忘れてしまうほど、妖怪たちはとても鮮やかで本当に生きているようでした。特にすごい体験だったのが、妖怪と一緒に写真を撮ったり、美術館専用のアプリに自分の写真をアップロードしたりすることで、会場をさまよう妖怪の世界に入り込むことができたのです。
会場には数百年前の版画や書物も展示されていて、当時の人々がどのように妖怪を想像して描いていたかを学べるエリアもありました。座れる場所や触って試せる展示物、日本語と英語の解説もありました。どの展示物も長い解説文ではなく、音や映像、動きで学べるので、文字を読むのが苦手でも楽しみながら、たくさんのことを学べる展示会でした。
自分だけの妖怪を描いてみよう
自分で妖怪を描いてみるなら、どんな姿にしたい?
自分で妖怪を描いてみるなら、どんな姿にしたい?
広島の「三次もののけミュージアム」も妖怪の世界で遊べる、特別な場所です。館内には3つの楽しい展示エリアがあり、毎年テーマが変わる特別展示室もあります。「日本の妖怪」エリアでは、全国の有名な妖怪について学べます。「稲生物怪録」エリアでは、200年以上前に三次の町に現れたという妖怪についての展示が見られます。
「妖怪カメラ」ブースで妖怪と一緒に楽しい写真を撮って、友達に送ってみて。
「妖怪カメラ」ブースで妖怪と一緒に楽しい写真を撮って、友達に送ってみて。
チームラボの「妖怪遊園地」のコーナーでは、あなたが描いた妖怪に命が吹き込まれ、大画面の中で生き生きと動き出します。妖怪は動いたり、触れると反応したり、ほかのお友達が描いた妖怪と一緒に遊んだりすることも。ちょっとこわいガイコツを描いてみる?赤い顔に長い鼻をもった「天狗」を描いてみる?それとも、ここで学んだ妖怪たちにする?妖怪カメラで自分を「河童」に変えて、友達に写真を送ることもできます。
天狗は長い鼻と赤い顔をしていて、見た目ですぐわかるでしょう。
天狗は長い鼻と赤い顔をしていて、見た目ですぐわかるでしょう。
ちょっとこわくても、おかしくても、ただ変わっていても、妖怪は何百年も前から日本の文化になじんでいます。あなたも妖怪に出会って、その物語の登場人物になれるかもしれません。さぁ、日本に伝わる、このふしぎな妖怪の世界に飛び込む準備はできましたか。