相撲力士の1日
親方と相撲部屋
力士はみな相撲部屋に所属して、若いときはここで生活もけいこもします。相撲部屋というのは、強くなって引退した力士が師匠(ししょう)になって運営しており、2021年3月現在44あります。部屋には行司や呼び出し、まげを結う「床山(とこやま)」なども所属しています。師匠は親方とも呼ばれ、奥さんのおかみさんが裏方を支えています。
実力の世界
力士と一口に言っても、十両以上の関取とそれ以下の幕下、三段目、序二段、序の口とでは、天と地のちがいがあります。関取になると給料がもらえますし、取り組み前の力士紹介の際に、化粧(けしょう)まわしという、エプロンのような足首までの長さの豪華(ごうか)な刺繍(ししゅう)をほどこしたまわしを着けることができます。なにより身の回りの世話をしてくれる付け人がつくようになります。まげも関取はイチョウの葉の形をした大銀杏(おおいちょう)を結えます。本場所のまわしは関取の物は絹製でいろいろな色が許されていますが、幕下以下は木綿の黒一色。実力の世界と言ってしまえばそれまでですが、収入も待ぐうも厳しい格差があります。
けいこは四股から
力士は朝早くからけいこに汗(あせ)を流し、番付が上がる努力をします。部屋の朝は午前5時ごろから始まります。まず番付の下の力士からけいこをします。部屋にはけいこ用の土俵があります。始めに両足を開いて立ち、手を太ももかひざにそえ、じく足を軽く曲げて、反対の足を高く上げ、じく足のひざを伸(の)ばしながら、上げた足をつまさきから強く土俵に下ろす四股をふみ、下半身をきたえます。
鉄砲(てっぽう)と股割り(またわり)
また、つく手と同じ側の腰を入れながら、同時に同じ側の足をすり足で入れていく「鉄砲」をくり返します。これは相手をせめるときの足運びと手の動きの基本になるけいこです。ひざを伸ばしたまましりを地面につけ、両足を180度開いて、前にふせて胸まで地面につける股割りも下半身のじゅうなん性をつける重要なけいこです。
申し合いとぶつかりげいこ
この後、勝ちぬきで相手が代わっていく「申し合い」、せめ手と受け手に分かれる「ぶつかりげいこ」などを行います。少しおくれて関取たちが起きてきて、けいこに加わります。やることはほとんど同じですが、下の力士のけいこもつけてやります。もちろん、けいこ中は私語厳禁。肉体のぶつかり合う音と、あらい息づかいだけが大きく聞こえます。けいこは本場所が近づくにつれて熱がこもってきます。親方は土俵の前の板の間に座ったり、土俵に下りたりしながら、指導します。
8時すぎには若い力士のちゃんこ当番が料理のしたくを始めます。ちゃんことは力士が食べる食事のことで、なべ料理も中華(か)料理もさし身も揚(あ)げ物も、すべてちゃんこと呼ばれます。なべ物が多いのですが、最近の若い人の好きなものが取り入れられて、カレーライスやハンバーグも登場します。力士の食事は1日2回。午前11時ごろの昼食と午後6時ごろからの夕食です。若い力士がちゃんこを作り終える午前10時半ごろにけいこが終わると、上のものから順におふろに入り、まげを整えてから食事が始まります。もちろん食べる順番は関取からです。食事が終われば自由時間ですが、体を大きくするために、多くの力士が昼ねをします。