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子どもクラブ

津軽三味線
(つがるしゃみせん)


舞台の様子

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本番前の優作君。少し緊張しているようです。

 では、いよいよ津軽三味線のステージを見てみましょう。山田さんが経営する津軽三味線ライブハウス「山唄」ではほとんど毎日、山田さんとお弟子さんたちが舞台に立って津軽三味線の演奏やこの地方の民謡を披露しています。お客さんはおいしい郷土料理を楽しみながら、ライブ演奏の迫力を肌で感じることができるのです。


 午後5時に店がオープンすると、1時間ほどで約90ある席は満席になりました。この店に入ったお客さんは、とにかく早く料理の注文を済ましてしまわなければなりません。なぜって?それはすぐにわかります。


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観客の目は舞台に釘付けです。

 午後7時、ついさっきまで料理やお酒を運んでいたウェイター・ウェイトレスたちが、突然三味線を手にもってステージに並びました。「山唄」で働く人々のほとんどが山田さんのお弟子さんたちだったのです。注文を取る人は全て舞台に上がってしまうので、「山唄」によく津軽三味線を聴きに来るお客さんたちは、早く注文を済ませなければならないことをよく知っていたのでした。


 山田さんが司会に立つと、店内はしーんと静まりました。お客さんは料理を食べる手を止め、舞台に注目しています。「では行きます、ハイッ」。山田さんのかけ声によって弟子たち全員による津軽三味線の合奏が始まりました。後列の端には小学5年生の渋谷優作君も参加しています。優作君は山田先生のもとで津軽三味線を習いはじめて2年め。弟子ではありませんが、先生に特別にお願いして1年前から合奏に参加させてもらって腕を磨いています。その隣には優作くんのおじさん、渋谷和生(じぶたにかずお)さんがいます。和生さんは、青森県弘前市で毎年開かれる津軽三味線全国大会で、過去に3連覇を含めて5回も優勝したほどの奏者で「優作が僕の影響を受けて津軽三味線を始めたんだとしたら、励みになりますね」と語っています。


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優作君は、叔父の和生さんの隣で演奏しています。

 ステージでは三味線の合奏が終わり、3人が順にソロでアドリブ演奏を披露しました。続いて女性の民謡歌手が津軽地方の民謡を歌います。ここでは三味線は伴奏音楽として使われています。その後もソロや民謡が交互に続き、奏者がときおり何気なく見せる技術の高さに、歓声や拍手が観客から巻き起こります。迫力いっぱいの津軽三味線のライブは約1時間20分ほどで終了しました。生演奏のすばらしさに酔った聴衆は満足げにお店を後にしました。


 ライブハウス「山唄」は弟子たちにとっては厳しい修業の場です。休業日は月に1~2度しかなく、彼らは毎日約1時間強のステージを2回ずつこなさなければなりません。だから腕もどんどん上達するのです。これまでにも「山唄」からは全国大会の優勝者が何人も出ています。また、3年以上修業してやっと一人前だ、と先生から言われています。


 優作くんは、2年前にここでライブを聴いて感動したことがきっかけで津軽三味線を始めました。今は来年の全国大会出場を目ざして稽古に励んでいます。いつか「山唄」で本格的修業をしますかと尋ねると、「それはまだ考えてないけど、中学校を卒業するまでには決めるつもりです」と答えてくれました。