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津軽三味線全国大会で3年連続優勝を果たした渋谷和生さん
津軽三味線の修得といっても、津軽三味線演奏には譜面も教本もありません。では山田先生はいったいどうやって生徒たちに教えているのでしょう? 稽古場をのぞいてみました。
弘前市のJR弘前駅の近くにある2階建てのビルがライブハウス「山唄(やまうた)」です。稽古場はその1階にあります。
稽古は毎週土曜日の午後3時に始まります。現在、山田先生のところには青森県内はもとより、他県からの生徒もあわせて15人ほどが通っています。生徒は子供から大人まで、いろいろな年齢の人々がおり、本格的に修行してプロを目指す人もいれば、趣味を広げたいという目的で来ている人など、その目的もさまざまです。
この日は、横内琢磨くん(15)と尾沢郁郎(おざわいくお)さん(59)がすでに練習を始めていました。2人は思い思いに、しかし真剣に三味線を弾いています。琢磨くんは弘前市の隣町に住む高校1年生で、去年の10月に三味線を習いはじめたばかり。尾沢さんは公務員を定年退職後の昨年8月からここに通っています。
津軽三味線を習うのに、年齢は関係ありません。
週末の練習のため、わざわざ他県から通う生徒もいます。
やがて山田先生が現れました。二人は先生と向かい合わせに座り、練習が始まります。先生はまず尾沢さんの方を向いて「じゃ、始めるよ、はいっ」とかけ声をかけて同時に演奏を始めました。リズムの付け方の練習のようです。曲には楽譜がないので先生の音に耳を傾け、指運びとバチさばきをじっと見てそのとおりにまねて覚えるしかありません。
尾沢さんの音に耳を澄ましている琢磨くんに先生は、「おい琢、お前も一緒にやるんだ」と声をかけると、琢磨くんはすぐに演奏に参加し、3人の合奏になりました。先生が琢磨くんの方に体を向けました。短い曲の一部を何度も何度もくり返し、息つく間も無いほどです。先生はときどき琢磨くんの三味線の弦を指さして、「それを叩いてから、ひっかければいいの」「そこをもっと速く」などと細かく指示します。うまくできると「そうだ。じゃ、次行くよ」と言って進んでいきます。3人とも、演奏の手を片時も休めません。狭い部屋に力強い三味線の音が響きわたり、ときおり先生のきびきびした声が通ります。2人の生徒は緊張のしっぱなしで声も出ないといった感じです。
約40分間つづいた練習が終わりました。先生は琢磨くんに「まだ練習が足りない。しっかり体で覚えるまで練習すること」と言いつつ、「がんばりさないよ」と付け加えました。今日の稽古の感想を聞くと、琢磨くんは「山田先生は言葉はストレートだけど、指示がわかりやすいので、ひとつひとつ確実に上達していく気がします」と笑顔で答えてくれました。