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漁業体験の当日は快晴。漁船に乗る心得や魚に関する注意事項を聞きます。
沼島と言えば、おいしい魚。そんな連想が自然に出てしまうほど、この島周辺の海は昔から高級魚の捕れる漁場として有名です。また沼島中学校に通う生徒たちの親の7割が、代々、漁業を仕事にし、島の重要な産業になっています。
ところが漁は早朝、まだ暗いうちから始まるので、子どもたちは親を手伝って船に乗るということがあまりありません。そこで実際に漁業が行われている現場を見学しようと、沼島中学校では漁船に同乗して漁業の現場を体験する特別授業『漁業体験』が全校をあげて行われています。
潮風を体いっぱいにうけていよいよ出発。
2年ぶりに行われたという今年の『漁業体験』は10月20日。朝から雲ひとつない秋晴れに恵まれ波も静かで、絶好の出漁日和です。朝8時半、波止場には船主であるお父さんたちの協力で5隻の底引き漁船がスタンバイし、全校生22人が4、5人ずつのグループになって乗船しました。
「お父さんの指示を守ること。オコゼ、エイのような毒のある魚に注意すること」 そんな注意を聞いた後、生徒たちを乗せた船は次々と出航。沖合2キロくらいの地点に点々と散らばります。底引き網で魚を捕るためには、海底45m前後の深さに高さ1.2メートル、長さ24メートルの網を沈め、魚群探知機を眺めながら、網で水底をさらうように40分くらい船を走らせます。そして甲板にあるモーターで網を巻き上げれば、細かい網目にひっかかった鯛や丸アジ、カマスなどが次々と揚がってくるのです。
底引き網漁とは、船尾から海底に長い網を沈め、これを船で引いて魚を取る漁法。下ろした網は船に備え付けた大型ローラーで巻き取っていきます。
オニオコゼ(鳥羽水族館)
「いろいろな魚が採れているね!」
網にかかった魚をより分けると、食用にできない雑魚がたくさん残ります。するとめざとく餌を見つけたカモメが数十羽、猛然と漁船の周囲を飛び交い、それは大変な迫力です。生徒たちは雑魚を拾い集めては飛び交うカモメに投げ与え、餌付けを楽しんでいます。
「沖に出ると波があってものすごく揺れたし、波しぶきがかかりました。網をあげるとカマス、丸アジ、でっかいクラゲなどがかかっていて、カモメがいっぱい寄ってきて恐かったけど、楽しかった」(中学3年・青石知子さん)
「(網を)曳いた後、鳥がいっぱい飛んできたのが一番びっくりした。白の鳥が、とても印象的だった」(中学2年・安達絵里菜さん)
「食べられない小さな魚はカモメにあげよう。」
中には船酔いがひどく、ずっと横になっていた生徒もいましたが、水揚げされた魚(小さなサメやタツノオトシゴが揚がった船もありました)を網からはずすときは、それぞれに大きな歓声をあげていました。
「一番おもしろかったのは、ウツボと戦ったこと。1回目はウツボに軍手をかまれたけど、2回目、3回目は海に放り込んだりしたことが一番面白かった!」(中学3年・松本将伍君)
「イカにスミを吐かれて、背中が真っ黒になった。けど、楽しかった」(中学2年・早見浩次君)
漁船の中はどうなっているのかな。漁師のお父さんが説明してくれました。
また船主であるお父さんは「海は面白いよ」「底引き網は1人でできる仕事だからいい」「波にあおられて、何度も甲板で転んだことがある」など、漁業の楽しさと苦労をぽつりぽつりと語ってくれます。
そして2時間後に帰港したときには各船がどっさりと沼島自慢の魚を持ち帰りました。5隻の船の水揚げを集めると、丸アジが80~90尾、カマス約100尾、アオリイカ15杯、鯛20尾、ハモ2尾、小さなイカ40~50杯。生徒たちは1人あたり数匹の魚を自宅にお土産として持ち帰り、今年の『漁業体験』は無事に終了しました。
左からアオリイカ、ハモ、アジ(鳥羽水族館)
釣果に思わずニッコリ(左)、一本釣りに挑戦した小学生やお手伝いしてくれたお母さんたちも大漁に大喜びです。