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春、日ごろの稽古の成果を試す本番の舞台が京都でありました。大阪に住む景晶君も、京都に住む進君・彩ちゃん兄妹も舞台に立ちます。彩ちゃんは「桜川」という曲に子役で出演しますし、景晶君・進君は「唐船」という曲に日本人の兄弟として登場します。
着替えをする進君。舞台に向けて気持ちが高まってきました。
ここで簡単に今日の曲目について説明しておきましょう。
「桜川」は親思いの子が、母の貧しい生活を見かねて、自ら人身売買業者に身を売ります。子の名前は桜子。この役を彩ちゃんが演じます。わが子の身売りを知った母親は、悲しみのあまり心を乱し、南の九州から北関東まで旅して、ついに母子は再会します。この母親役を井上先生が演じます。
「唐船」は、中国と日本の船争いの末に起こった出来事。九州・箱崎の領主は、祖慶官人という一人の中国人を捕らえ、13年間も牛馬の世話にこき使ってきました。官人は日本人の妻をめとり、二人の子供をもうけています。そこへ中国に残してきた官人の二人の子供がはるばる父を訪ねてきます。二人は領主に会って、許しを得て父を中国に連れて帰ろうとしますが、今度は日本の二人の子供が父親を引き留めます。困った父親は海に身を投げようとしますが、それを見た領主が、日本の子供もいっしょに帰ることを許したので、父子5人は喜んで中国に帰ってゆきます。景晶君と進君は日本人の兄弟を、景晶君のお父さんが中国人の兄弟の一人を演じます。人の能楽師が次々集まってきて、本番らしい緊張感がみなぎってきました。でも景晶君は先輩の能楽師に教わったロープマジックを周りの人に披露して、余裕たっぷり。進君も「ぜんぜん緊張なんかしないよ」と頼もしいかぎり。二人には本番前のプレッシャーなんて関係ないようです。
唐の子どもたちと帰郷するか日本の子どもたちとともに残るか、父親は悩みます。
やがてお昼となり、お弁当を食べ終えた景晶君、進君、彩ちゃんの3人は本番用の衣装に着替えましたが、さすがは豪華な能衣装、子供用でも立派なものです。見る見るうちに、かわいらしい稚児と、りりしい兄弟ができました。
午後1時、ついに開演です。まず「桜川」が始まりましたが、彩ちゃんは長時間にもかかわらず、きちっと舞台に座り、役をこなしています。
そして、景晶君と進君が登場する「唐船」が始まりましたが、二人とも大人たちに負けず劣らず、立派な動きです。声もよく出ています。
最後、景晶君や進君が乗った船で、シテ方の官人が喜びの楽を舞い、劇が終わると、客席からは大きな拍手が送られました。
楽屋で景晶君・進君に今日の出来を聞いてみると、二人とも口を揃えて「少し船に乗るタイミングが悪かった。謡も少しズレたけれど、全体としてはなんとか合わせることができた」と厳しい評価です。