人間の舌のメカニズムから開発
食品を液体にして測定します
そこで、味覚センサーはまったく発想を変えて開発されました。人間の舌のメカニズムを利用して、人間が感じる味そのものを数値化しようという試みが始まりました。人間の舌の表面はザラザラしていますが、そこには性質の違(ちが)うたくさんの味細胞(あじさいぼう)があります。食べ物が舌に触(ふ)れると、物質が味細胞とくっつきます。そして、化学変化を起こします。すると味細胞から脳に電流が流れます。脳はその信号を味としてとらえます。「甘(あま)い」とか「苦い」などと感じるのです。
味覚センサーは、人間の味細胞を人工的につくりだします。人間の舌ではタンパク質と脂質(ししつ)で構成された舌の表面が物質と反応します。味覚センサーでは、ビニール袋(ぶくろ)の材料でもあるポリ塩化ビニルという高分子に脂質をとけこませることで同様の反応を再現しました。
味は「酸味(さんみ)」「苦味(にがみ)」「甘味(あまみ)」「塩味(しおあじ)」「うま味」という5つの基本味からなります。研究を重ねることで、この5つの基本味だけに反応する味覚センサーの開発に成功しました。味覚センサーは後味も測定できるようになりました。味には、食べ物を飲み込(こ)んだ後も舌に残っている後味というものがあり、味の感じ方にとっては重要です。「コクのあるスープ」という表現がありますが、舌にいつまでも味が残っているとコクがあると感じるのです。
舌で味を感じる仕組み