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ハイテクジャパン

海に浮かぶ発電所


パート2

潮の満ち引きも利用

 海では、安定した強い風が吹くだけでなく、潮の満ち引きによる海水の流れもあります。風車と水車を組み合わせた「スクイッド」は、風力と潮流の両方を利用する、世界で初めての海に浮かぶ発電設備です。開発したのは、海底油田の石油・ガス生産設備を手がける日本の企業です。九州沖の海上で2014年春の完成を目指して工事が進んでおり、試運転のあと、その年の秋から発電を始めます。一番近くの島からは約1・5㌔離れており、海の深さは約50㍍です。


どの方向からの風でも効率よく発電できる「ダリウス型」の風車(三井海洋開発提供)

どの方向からの風でも効率よく発電できる「ダリウス型」の風車(三井海洋開発提供)


スクイッドの発電機は黄色い浮体の中央にあり、海中の水車がおもりとなって姿勢を安定させる(三井海洋開発提供)

スクイッドの発電機は黄色い浮体の中央にあり、海中の水車がおもりとなって姿勢を安定させる(三井海洋開発提供)

 スクイッドの風車は海上約50㍍、水車は海面下約16㍍まであり、海面に垂直な1本の軸を中心に回転するように取り付けられています。発電機は風車と水車の間にあり、出力は500㌔㍗です。約300世帯の電力をまかなえます。


 一般的な風力発電は、風車を回し始める前に羽根の角度などを調整するため、外部からの電力がないと運転を始められません。スクイッドは、潮流による電力を使って風車を回し始めることができます。そのため、大規模な災害などで周辺の発電所が運転を止めてしまっても、真っ先に発電を始められます。


浮体と発電機の間には、波の揺れを伝えないよう特殊なゴムを使っている(三井海洋開発提供)

浮体と発電機の間には、波の揺れを伝えないよう特殊なゴムを使っている(三井海洋開発提供)

 日本の離島では、遠くから電力を運べず、島内のディーゼル発電所に頼っている地域が多くあります。そのような人口があまり多くない島の近くにスクイッドを浮かべると、石油の消費量を大幅に減らすことができます。同じような島々は世界中にあり、スクイッドが実用化されれば、これらの島々でも自然エネルギーの活用を進めることができます。



将来を支えるエネルギーに

陸上で風力発電の試験をしているスクイッド(三井海洋開発提供)

陸上で風力発電の試験をしているスクイッド(三井海洋開発提供)

 海上の風は地形の影響を受けないため、強さや方向が安定しています。ヨーロッパでは海上での風力発電が盛んですが、海底に設備を固定するタイプが主流で、水深50㍍ ぐらいまでの場所にしかつくれません。海面に浮かべる風力発電設備は、遠浅の海が少ない日本にぴったりの技術です。新しいタイプの洋上風力発電が実用化されれば、将来の日本を支える新しいエネルギーとなるだけでなく、世界中で風力の利用がさらに増えることになるでしょう。


(2014年1月更新)