食料問題を解決する鍵
現在70億人の地球の人口は、2050年には90億人を超えるとも言われ、すべての人のおなかを満たしていくためには、様々な課題をクリアする必要があります。日照や気温、降水量などの天候に左右されがちで、大地に根付いた植物を病害虫から守りながら育てるこれまでの農業の方法では、安定的な食料供給は難しいのです。そんな中、土を使わずに屋内で野菜などを作る植物工場が、日本の各地で開設され、実際に作られた新鮮(しんせん)な野菜が家庭やレストランで使われています。農薬を使わずに栽培(さいばい)できるなど利点は多く、日本の技術は海外でも注目を集めています。

日本各地で作られている植物工場の内部 ©ベジタス
1年中生産が可能
植物工場は、植物の生育に必要な光や温度、湿度、養分などをコンピュータで人工的に管理しながら栽培する施設(しせつ)です。屋根を開けて太陽の光を利用する場合もありますが、日本で今注目を集めているのが完全に閉鎖(へいさ)された屋内で、太陽光の代わりに、蛍光灯(けいこうとう)や発光ダイオード(LED)照明などの人工光を使う方式です。土の代わりに、養分を入れた水で育てます。太陽の日照時間や温度に左右されないため季節に関係や場所にも関係なく、一年中ずっと安定的に生産できます。屋内ですから病害虫の混入がなかったり、雑草が生えたりしないため、農薬を使わずに安全な野菜を生産できるのも大きな特長です。最近は、LED照明の光の波長を変えるなどして、より栄養価の高い植物を育てるための研究も進んでいます。
現在日本には、人工光のみで植物を栽培する工場が全国で30施設以上あるとされていますが、現在、急激(きゅうげき)なスピードで、各地で開設する計画が進んでいます。