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ハイテクジャパン

野菜も工場で作る時代


パート2

毎日2万株のレタス

日本で最大級の植物工場

日本で最大級の植物工場 ©ベジタス

 日本を代表する植物工場を紹介しましょう。京都府亀岡市にある植物工場は4階建てで、1フロアに4段の棚(たな)を作りレタスを栽培しています。栽培面積は21400平方?。1日約2万株のレタスを出荷し、スーパーなどで販売しています。4階建てですから、土地を効率的に使え、面積当たりの収穫量は土地で栽培する場合の100倍にもなります。


 ここでは60人が働いていますが、生産を担当する人はみな、清潔な白い作業服にマスク、白い帽子をかぶっています。生産する場所に入る場合は、アルコールで手を消毒してエアシャワーを浴びて、植物に害がある病害虫や菌を持ち込まないように徹底します。その姿は、土地で野菜を作る農業生産者とはまったくイメージが違います。温度や湿度、照明時間、水養液などはコンピュータで管理し、農作業というより、精密機械や医薬品などを作る工場のようにも見えます。


野菜を生産する場所に入るにはエアシャワーを浴びる 野菜を生産する場所に入るにはエアシャワーを浴びる ©ベジタス  レタスの育成状況をチェックする担当者 レタスの育成状況をチェックする担当者 ©ベジタス

都会のビルでも野菜作り

 植物工場は日本各地にありますが、最もユニークな場所は、日本が極地観測(きょくちかんそく)のため南極に開設している昭和基地です。2008年に開設された小規模なものですが、主に蛍光灯ランプを光源としてレタスやバジルといった葉野菜を栽培しています。南極は氷点下40度近くにもなる厳(きび)しい環境ですから、ここで働く隊員の食事は、フリーズドライやレトルト食品に偏(かたよ)りがちですが、植物工場ができたことで一年中、生の野菜を食べることができ、隊員たちも大喜びだそうです。


社内に植物工場を持っている企業の本社ビル)

社内に植物工場を持っている企業の本社ビル ©パソナグループ



1階ホールで栽培している野菜。育成状況に合わせて照明時間を調整する

1階ホールで栽培している野菜。育成状況に合わせて照明時間を調整する 
©パソナグループ

 また、都会のビルの中で野菜を生産するという企業もあります。東京のオフィス街では、人材サービスの大手企業が社内に植物工場を作り、生産した野菜を社員たちが食べる食堂の食材にしています。それだけではなく、訪れた人が見学できるように社内の1階のほか、会議室の一部を植物工場としてレタスなどを生産しています。


 また、受付の天井部分ではキュウリ、応接室の天井ではトマトを生産しています。以前は実験的にコメを生産したこともあり、植物工場の技術を使えば、都会のビルでも植物を生産できることを証明しています。


 爆発的な人口増に直面して食料供給に不安を抱える国は多く、日本の植物工場には海外からの視察(しさつ)や問い合わせも増えています。天候や環境に左右されず、土壌も汚染しない日本の植物工場の技術が、食料問題の解決に寄与(きよ)できる日は近いようです。


会議室の壁面にある植物栽培の施設。収穫した野菜は社内レストランの食材にする 会議室の壁面にある植物栽培の施設。収穫した野菜は社内レストランの食材にする 
©パソナグループ
応接室の天井ではトマトを栽培 応接室の天井ではトマトを栽培 ©パソナグループ

(2013年2月更新)