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ハイテクジャパン

光を帆に受け、宇宙を航行―「イカロス」


パート1

回転の力で帆を広げる

連続写真 イカロスが宇宙空間で帆を開く様子のCG画像(提供 JAXA)

連続写真 イカロスが宇宙空間で帆を開く様子のCG画像(提供 JAXA)

 イカロスの任務は、ほとんど動力を持たない宇宙ヨットが、宇宙空間で安定して航行を続けられるのかを確かめることです。


 日本の種子島から打ち上げられたイカロスは、まずロケットから回転しながら切り離され、実験機本体部に巻き付けた四角い帆の先に取り付けた四つの重りを回転させながら広げる実験を成功させました。ヨットといえば、普通はマストを立てて帆を張りますが、それだと宇宙船が大きく、重くなってしまいます。そこでJAXAは、回転で生まれる遠心力を使って本体部に巻き付けた帆を自然に広げ、そのままの状態を保ち続けるという新しい仕組みを取り入れたのです。


太陽電池の実験も成功

本体部から切り離されて宇宙空間でイカロスが帆を広げる様子などを撮影をしたカメラのCG画像。このカメラも世界最小の「惑星間子衛星」としてギネス認定を受けた(提供 JAXA)

本体部から切り離されて宇宙空間でイカロスが帆を広げる様子などを撮影をしたカメラのCG画像。このカメラも世界最小の「惑星間子衛星」としてギネス認定を受けた(提供 JAXA)

 イカロスは、太陽の光の力を受ける帆の向きを調整するだけでスピードを速めたり、遅くしたりする機能を備えています。帆の端に取り付けた液晶(えきしょう)画面を鏡のような状態にしたり、曇りガラスのような状態にして、帆が受ける光の反射のバランスを変えることで進む方向とスピードをコントロールするのです。液晶を操作するために必要な電力が、帆に張った太陽電池で発電する「電力セイル」技術によって生み出されたことも今回の実験の大きな成果となりました。


 JAXAは、このイカロスの技術を、木星探査など遠くの宇宙に到達するための探査機開発につなげる考えです。帆を何倍にも大きくして、太陽から遠く離れても太陽電池で電力を得たり、長期間の省エネ航行を実現するためにソーラーセイルと高性能イオンエンジンを組み合わせることなどが検討されています。


宇宙空間で帆を広げた実験機「イカロス」をカメラで実写した映像。イカロスは、太陽光の圧力で飛行する世界初の宇宙ヨットとしてギネス認定を受けた(提供 JAXA)

宇宙空間で帆を広げた実験機「イカロス」をカメラで実写した映像。イカロスは、太陽光の圧力で飛行する世界初の宇宙ヨットとしてギネス認定を受けた(提供 JAXA)


 人類の夢を実現するため、イカロスは今も大宇宙を航行しながら、貴重なデータを地球へ送り続けています。


(2014年3月更新)