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ハイテクジャパン

新型ロケット「イプシロン」


パート1

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)の新型ロケット「イプシロン」1号機が2013年9月、鹿児島県の内之浦宇宙空間観測所から打ち上げられました。日本がロケットを新開発したのは、主力ロケットである「H2A」以来、12年ぶりのことです。最新のテクノロジーを取り入れたイプシロンの開発は、大勢の人が関わるロケット打ち上げの仕組みを改革して、費用を大幅に節約することがテーマです。人類が「安く、早く、簡単に」宇宙開発を進めることができる“未来”は、すぐそこまで来ています。


2013年9月、宇宙に向けて発射された「イプシロン」1号機(提供JAXA/JOE NISHIZAWA)

2013年9月、宇宙に向けて発射された「イプシロン」1号機(提供JAXA/JOE NISHIZAWA)


打ち上げ費用を節約する

打ち上げリハーサル中のイプシロン1号機(提供JAXA)

打ち上げリハーサル中のイプシロン1号機(提供JAXA)

 イプシロンは、全長24.4㍍、直径2.6㍍で、火薬のような固体の燃料を使う3段式のロケットです。H2Aやロシアのソユーズなど各国の主要ロケットと比べて半分ほどのサイズですが、高度数百㌔の地球周回軌道に重さ1.2㌧ほどの人工衛星を打ち上げる能力を持っています。


 固体燃料を使うロケットは、液体燃料で飛ぶロケットと違い、構造がシンプルで、打ち上げの準備作業が少なくてすむのが特徴です。日本は固体燃料ロケットに関して最先端の研究を進めたことで知られますが、イプシロンの前に活躍した「M-V(ミュー・ファイブ)」は、70億円以上もかかる高額の打ち上げ費用が問題となり、06年に廃止されました。そこでJAXAが改めて開発に取り組んだのがイプシロンです。


世界の主要ロケットとイプシロン

 09年にスタートしたイプシロン開発は、ロケット打ち上げを簡単でお金のかからない仕組みにすることが最大のテーマとなりました。高性能ロケットを生み出すことも大切ですが、これからの宇宙開発にとってもう一つ重要なことは、ロケットを打ち上げやすくすることです。開発者たちは、まるで旅客機のように日常的に宇宙にロケットや宇宙船を飛ぶ未来社会を夢見たのです。


イプシロンロケット開発の現場(提供JAXA/JOE NISHIZAWA)

イプシロンロケット開発の現場(提供JAXA/JOE NISHIZAWA)

M-Vの技術を受け継いだイプシロンロケットの上段エンジン(提供JAXA/JOE NISHIZAWA)

M-Vの技術を受け継いだイプシロンロケットの上段エンジン(提供JAXA/JOE NISHIZAWA)

 最も開発が難しいエンジン部分は、新しく設計するのではなく、実績のあるH2Aの打ち上げ用補助ロケットと、M-Vの上段エンジンを組み合わせて作りました。機体の構造や、ロケットを切り離す機能についても、多くはM-VやH2Aの技術を受け継ぎ、軽量化するなどの改良を加えました。