光ケーブル網で津波を常時監視
![地震の発生をリアルタイムで監視するための海底ケーブルを敷設する作業船](images/006.jpg)
地震の発生をリアルタイムで監視するための海底ケーブルを敷設する作業船
©海洋研究開発機構
東日本大震災では、津波で大きな被害が出ました。津波は地震で海底の地形が急に変化すると発生する波のことで、大震災では高さ20?もの津波に襲われた地域もありました。予想を超えた津波になったことで、この分野の研究もさらに大事になりました。
津波が来るかどうかは通常、陸地に伝わった地震波を分析して判断します。しかし、これだけでは正確な情報は分かりません。
日本には、地震計や津波計などの観測機器を海底に設置し、それらを光ファイバーの海底ケーブルで結ぶ観測網もあります。ただ、日本全体の地震計の設置数は、陸地に約1500基あるのに対して、海底では国や研究機関が10海域で持つ計55基だけです。そこで、現在、これを大幅に増やす大プロジェクトが進んでいます。
東日本大震災のあった東北の太平洋沖の海底には、地震計が3カ所に設置されていますが、今春、150カ所以上に地震計と津波計を設置する計画がスタートしました。これらの機器をつなぐケーブルの総延長は約5100?で、実に東京―ロサンゼルス間の半分以上の距離にも達します。
![海底ケーブル網の機器設置や敷設や修理に活躍するROV「ハイパードルフィン」](images/007.jpg)
左/海底ケーブル網の機器設置や敷設や修理に活躍するROV「ハイパードルフィン」。海底資源探査でも活躍する ©海洋研究開発機構
右/海底に地震計(右)の設置作業をするROV「ハイパードルフィン」(左)
©海洋研究開発機構
また、南海トラフ周辺でも、現在の20カ所に加えて、新たに25カ所で増設する準備が進んでいます。深海では、海流による特殊なノイズが邪魔をして、地震の揺れの大きさを正確に測れない場所があります。そこで、南海トラフの地震計は、船上から遠隔操作ができる無人探査機(ROV)で、穴を掘って海底に埋めています。ROVは機器の故障を直すことにも利用できます。
地震計のデータは気象庁に送られ、地震発生の際に各都市が揺れる時間や震度、震源などを知らせる緊急地震速報の精度を高めるために活用されます。津波計のデータは、今までリアルタイムに分からなかった津波の大きさや陸地に届く時間を正確に知る重要な手掛かりとなり、多くの生命や財産を被害から守る対策作りに役立つでしょう。
これらの挑戦の積み重ねにより、日本は地震災害に強い国を目指しています。
(2012年6月更新)