尾ヒレをパタパタ。右に左に、上に下に、自由自在に動く
「もともと医療用の超小型機械の研究をしていたのですが、胃腸内でカプセル内視鏡を自由に動かすには、魚の動きを参考に、尾ヒレで動かす方法がもっともよいのではないかと考えました」
この「ヒレで動かす」という大塚名誉教授のアイデアが実を結び、自走式カプセル内視鏡の試作機が完成しました。
では、自走式カプセル内視鏡は、どのように動くのでしょうか? カプセル内視鏡のヒレには、永久磁石がついています。人間がカプセルを飲み込み、4つの大きな電磁石のついた「磁場発生装置」のなかに体を入れると、磁場が永久磁石を振動させて、ヒレが動きます。自走式カプセル内視鏡の速度や方向は、体の外からジョイスティックで操作できるようになっています。
ヒレをパタパタさせて泳ぎ回る自走式カプセル内視鏡は、まるで元気のよい生きた魚のようです。

実際の検査の様子。ジョイスティックを操作すると、自走式カプセル内視鏡の尾ヒレが動く

内視鏡で撮影した胃の様子が、モニターに映し出される

このように磁場発生装置の中に入って、検査を受ける
この自走式カプセル内視鏡を使うときには、あらかじめ胃腸内をきれいにした後で水などの液体を飲み、大腸検査の場合はお尻から水を注入します。胃腸内で自走式カプセル内視鏡が“泳ぎやすい”環境にするわけです。その結果人間の胃腸内でも自由に方向を変え、動かすことができ、すみずみまで撮影することができます。検査は数時間ですみます。

体内での自走式カプセル内視鏡の様子
自走式カプセル内視鏡が広まれば、ガンや、従来は発見が難しかったクローン病など胃腸内の病気のほとんどが手軽に検査できるようになります。将来は検査だけでなく、ポリープを切除したり、病気になっているところに直接薬を届けたりするなど、かんたんな治療までできる装置に進化していくだろう、と大塚名誉教授は語ります。
人間の体内という暗黒の世界が、また日本の画期的な医療技術によって明るく照らし出されようとしています。
(2011年11月更新)