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電車の形をした貯金箱は、硬貨(こうか)を入れるとメロディーが流れるので、貯金をするのが楽しくなります。©株式会社タルガ
みなさんは、貯金箱を使ったことがありますか? 日本では、パスワードを入力してお金を出すタイプやコインを入れると音が鳴るタイプなど、楽しくお金を貯められる貯金箱が続々と登場しています。
始まりは2,000年以上も前?! 日本の貯金箱のルーツ

室町時代の貯金箱「せんべい壺(つぼ)」。口が大きく胴(どう)が丸くふくらんだ、茶色い土器です。©尼崎信用金庫 世界の貯金箱博物館
昔の人たちも、私たちと同じように貯金箱を使っていたのでしょうか? 貯金箱は何千年も前から世界各国で使われてきましたが、それが生まれた理由は国ごとにちがうようです。例えば欧米(おうべい)では、寄付のための献金箱(けんきんばこ)が貯金箱のルーツだそうですが、日本の貯金箱は、縄文時代(じょうもんじだい)(紀元前31世紀頃〜紀元前4世紀頃)の終わりに登場した「米や水を備蓄(びちく)するための土器」が発展したものではないかと、研究者の間で考えられています。そのころ、日本では稲(いね)を栽培(さいばい)して米を作るようになったことから、人々は収穫(しゅうかく)したお米を土器に入れて保管しました。その後、室町時代(1336〜1573)に入ると、「せんべい壺(つぼ)」と呼ばれる胴体(どうたい)が丸い茶色の土器に、お金を貯める習慣が生まれたといいます。同じ貯金箱でも、国によってその成り立ちが違うなんて興味深いですね。
また多くの国と同じように、日本でも縁起(えんぎ)が良いとされるモチーフの貯金箱が使われてきました。幸運やお金を呼びこむシンボルである「招き猫(ねこ)」や、商売繁盛(しょうばいはんじょう)の神様として古くから親しまれてきた「恵比寿様(えびすさま)」の貯金箱は、定番の貯金箱として知られています。
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日本で古くから使われている縁起物(えんぎもの)をモチーフにした貯金箱の例。©尼崎信用金庫 世界の貯金箱博物館
コインを入れるのが楽しみになる、おもしろ貯金箱
そのような日本の貯金箱について、最新のトレンドをごしょうかいしましょう。まず、子どもたち向けの貯金箱では、おもちゃのように工夫がこらされたタイプが人気です。例えば、銀行のATMにそっくりな貯金箱。いつもお父さんやお母さんが銀行で使っているATM(※1)のように、カードを差しこみ、暗証番号を打ちこんでお金を引き出します。お金を入れたときや引き出したときにはいろいろなサウンドが鳴るので、気分が盛り上がります。さらに、画面には今までの貯金総額が表示されるので、「こんなに貯まったんだ」とうれしくなり、もっと貯金をしたい気持ちになる仕組みになっています。
※1 ATM(automated teller machine)……銀行や郵便局の現金自動預けはらい機。金融(きんゆう)機関をはじめ、スーパーやコンビニエンスストアに設置され、いつでも現金を預けたり、引き出したりすることができます。
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カードを差しこんで、お金を入れます。音が鳴るので、さわるたびに楽しい気持ちになります。©株式会社ピーナッツ・クラブ
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お金を取り出すには、暗証番号が必要。まるで本物のATMのようで、大人になった気分です。©株式会社ピーナッツ・クラブ
また、本物さながらの電車の形をした貯金箱も登場しています。コインを入れると電車の前についたライトが光り、実際の駅で使われている短いメロディー「駅メロ」が流れます。駅メロとは、電車の発車を知らせるために流すメロディーのことで、駅や鉄道会社によって曲が異なるのが特徴(とくちょう)です。この貯金箱から流れる駅メロは6種類ありますが、お金を入れるまではどの駅メロが流れるかわからないので、子どもたちは「今回はどんな曲が流れるのかな?」とワクワクしながらコインを入れます。また日本では、大人でも電車好きな人がたくさんいます。そんなかれらにとっても、電車の形の貯金箱は大のお気に入りです。

電車の窓から、硬貨(こうか)が落ちていくのが見えます。「どのくらい貯まったかな」とついのぞきこんでしまいます。©株式会社タルガ

電車の後ろに付いているドアはかざりではなく、ちゃんと開きます。ここからお金を取り出すことができるのです。©株式会社タルガ
自分だけのオリジナル貯金箱を作ろう!
さらに最近では、「自分だけのオリジナル貯金箱がほしい!」と、ダンボールや粘土(ねんど)、牛乳パックを使って、一から貯金箱を作る子どもも増えています。夏休みの自由研究として学校に提出する子も多く、動物、車、家など、みんな発想力豊かに個性的な貯金箱を工作しています。
一方、「一から作るのは難しそう」としりごみする子どもだって、心配はいりません! 日本では、貯金箱を簡単に組み立てることのできるキットが発売されています。例えば、ノコギリや釘(くぎ)などの工具を使うことなく、30分ほどで貯金箱が完成するキット。人気の秘密は、うさぎや猫が見せるユーモラスな動きです。所定の場所にコインを置いて前面についたハンドルを回すと、動物の目や手や耳がピョコピョコと動き出して、お金がコトンと箱の中に落ちるのです。工作をすることのワクワク感や達成感、そして、しかけの面白さを味わえるキットに、子どもたちは夢中です。
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説明書を一生けん命見ながら、がんばって作ります。なので、完成したときはとてもうれしくて、「これからたくさん貯金しよう」という気持ちになります。©株式会社アイスタジオウッズ
ユニークで遊び心いっぱいの日本の貯金箱。みなさんの国の貯金箱と日本の貯金箱には、どのようなちがいがありますか? お気に入りの貯金箱を使えば、貯金するのがますます楽しくなりそうですね。
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