伝統の「かまくら」
雪がたくさん降ると、ドームの形に積み上げた雪をくりぬいて「かまくら」と呼ばれる家を作る地域が日本にはたくさんあります。「雪でできた家」と聞くと、寒そうに思いますが、中に入ってみると、とても暖かくてびっくりします。理由は、雪の壁が風よけになっているというだけではありません。雪の中に含まれた空気が断熱材(だんねつざい)の役割を果たしているのです。

秋田県横手市の「かまくら」。子どもたちがかまくらの中から声をかける(C)共同通信社
大陸に面した日本海側の秋田県や新潟県の地方には、このかまくらの中で神様をまつる行事が古くから伝わっています。なかでも秋田県横手市の「かまくら・ぼんでん」は特に有名です。夕暮れに道を歩くと、家の軒先に作られた高さ3㍍、幅3.5㍍にもなるかまくらの中にあかりが灯され、中から子どもたちが地元の方言で「入ってたんせ(かまくらに入ってください)」と声をかけてくれます。かまくらの中で、飲み物や餅(もち)をご馳走(ちそう)になれば、まるで日本の昔話の絵本にでも迷い込んだような気分になります。
雪と炎の祭典
新潟県小千谷市では毎年、雪原に並んだ高さ50㌢ほどの小さなかまくら約3000個の一つ一つにろうそくの火を灯す「ほんやら洞まつり」が開かれます。雪に埋まった畑地を利用して、地域の住民が20年ほど前に始めた手作りのイベントです。雪原のかまくらづくりは、毎年お祭りの日の午後から始められるので、スコップを持っていけば、誰でも参加することができます。

「ほんやら洞まつり」の雪原の会場に、火をともす参加者(C)共同通信社

「火振りかまくら」では思い切り火を振り回して、無病息災を祈る。(提供 秋田県仙北市観光商工部)

火をつけた俵を回し始める子ども(C)共同通信社
同じ火を使ったお祭りでも、秋田県仙北市の「火振りかまくら」は、火の輪がぐるぐると回る激しい様子が大きな見どころです。400年以上前から続けられている伝統行事で、1㍍ぐらいの縄(なわ)の先で燃えているのは、炭の俵です。ゆっくりと静かに縄を振り回すと、炎がうなりを上げ始め、やがて美しい火の輪が完成します。
(2014年3月更新)