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流行通信

食玩―広がる小さなおもちゃの世界


パート2

集めたくなる手作りの魅力

本物そっくりに作られた動物シリーズの「セキセイインコ」(上)と「アメリカンショートヘア」。体の模様など、きめ細かい作りや着色は、すべて手作業(提供 海洋堂フィギュアミュージアム黒壁 龍遊館)

本物そっくりに作られた動物シリーズの「セキセイインコ」(上)と「アメリカンショートヘア」。体の模様など、きめ細かい作りや着色は、すべて手作業(提供 海洋堂フィギュアミュージアム黒壁 龍遊館)

 ところで、食玩のフィギュアをよく観察すると、表情や髪の毛、筋肉の動きなどに細かく気を配られた彫刻のような造りに改めて驚かされます。お小遣いでも買える子どものおもちゃなのに、それを感じさせない高い品質で、誰もがコレクションしたくなる優れた製品を作ることが、食玩を作る日本の会社のテーマとなっているのです。


 立体的な形であれば、センサーで読み取ったり、パソコンで描いた絵から簡単に作ることができる3Dプリンターが注目されている時代ですが、食玩フィギュア造りの基本は、今でも手作りです。まず、「造形師(ぞうけいし)」と呼ばれる粘土作りの職人が、モデルになるアニメのヒーローや動物をスケッチから創造して、精巧(せいこう)な型をつくります。型をもとにできたプラスチックの部品を組み立てて色を塗るなど、多くの工程が手作業です。出来上がったフィギュアを見ると、目の色づけなどが、とても機械ではできない細かい作業であることに気づくはずです。


自分で採った虫などをモデルに、プロの造型師にフィギュア作りの指導を受ける子どもたち(提供 海洋堂フィギュアミュージアム黒壁 龍遊館)

自分で採った虫などをモデルに、プロの造型師にフィギュア作りの指導を受ける子どもたち(提供 海洋堂フィギュアミュージアム黒壁 龍遊館)

 そんな食玩の世界を子どもたちに知ってもらおうと、フィギュアの作り方を習える教室があります。色を塗っていないフィギュアにアクリル絵の具で色を塗るだけのコースもありますが、山や川で捕まえた昆虫や魚をモデルに、一から作れる上級者向けの教室もあります。自分で作った作品を並べてジオラマを作ることができたら、どんなに楽しいでしょう。


フィギュア教室で参加者が作ったジオラマ(提供 海洋堂フィギュアミュージアム黒壁 龍遊館)

フィギュア教室で参加者が作ったジオラマ(提供 海洋堂フィギュアミュージアム黒壁 龍遊館)


スマートフォン画像を投影

 パソコンで作ったコンピューター・グラフィックス映像などを建物や物に投影して見せる「3Dプロジェクション・マッピング」という技術があります。夜の闇(やみ)の中、建物の壁を映画のスクリーンのように使って映し出される華やかな映像と音楽がミックスされた芸術は、世界中のお城や駅、コンサート会場などで楽しまれています。日本では今、この物と光が作る新しい芸術の世界を小さな箱の中で楽しむことができる「ハコビジョン」という食玩が開発されて、話題を集めています。


箱の上に置いたスマートフォンの画像を映して、小さな箱の中に3Dプロジェクション・マッピングのイベントの様子を再現する新開発の食玩「ハコビジョン」(C)バンダイ

箱の上に置いたスマートフォンの画像を映して、小さな箱の中に3Dプロジェクション・マッピングのイベントの様子を再現する新開発の食玩「ハコビジョン」(C)バンダイ


 ハコビジョンは、スマートフォンの映像を小さな箱の中のフィギュアに投影して、プロジェクション・マッピングを再現します。準備は簡単で、箱を分解して、中に入った建物のフィギュアを箱の奥に、透明なシートを斜めに立てかけるだけです。特殊な映像を受信したスマートフォンを箱の上に置けば、シートに映像が反射して、小さな箱の中がまるで屋外イベント会場のようにキラキラと輝き出します。スマートフォンから流れてくる美しい音楽に合わせて色とりどりのボールが吹き出してくる様子は、何度も繰り返して見たくなるほど鮮やかです。


 食玩の小さな箱の中には、小さなおもちゃで大きな感動を味わってもらおうと努力する製作者の真剣な思いが詰まっています。


(2014年2月更新)