復活!海外でも注目
長い間、生活必需品として日本人に愛用されてきたそろばんですが、この数十年の間に電子計算機やパソコンに役割を奪われ、使われる場面が急に減ってしまいました。そろばんの技術を認める検定試験の受験者も、1980年に204万人だったのが2005年度には10分の1以下になってしまったほどです。
しかし、“復活”のチャンスは、すぐまたやって来ました。2002年、ある小学校で2年生から6年生の児童の教育に、5年間そろばん学習を取り入れたところ、算数だけではなく他の教科でも学力が向上したのです。「そろばんを学ぶことで集中力が高くなった」という見方が新聞などで紹介され、全国の小学校でそろばんの授業が増えるなど、新たなそろばんブームがわき起こったのです。
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ハンガリーの小学校では、20年ほど前から算数の授業にそろばんを導入(提供 トモエそろばん) |
そろばん学習については、脳の働きを活発にし、記憶力や創造力、集中力を高めるなどさまざまな効果についての研究成果が報告されています。今では、日本から約50の国々にそろばんが輸出されており、そのうちハンガリーなど約20カ国では、学校教育にそろばんを取り入れています。検定試験をする国も、アジアや欧米をはじめ、南米の国々に広がっています。
世界に1つだけのデザイン
日本の職人が作ったそろばんは、玉の滑りがなめらかで使いやすい上に、とても頑丈です。子どもたちの中には、新しいものを買わずに親やおじいさん、おばあさんが使っていた古いそろばんを大事に使っている子もいます。
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職人が手作業で作る日本のそろばん(提供 株式会社ダイイチ) |
そうした、古いそろばんを大事に使う文化も大切ですが、世界で1つだけのそろばんが持てたら、楽しいと思いませんか。日本で一番たくさんのそろばんを生産する兵庫県小野田市には、枠の材料や玉の色を自由に選んで自作できるお店の「そろばんビレッジ」があります。お店はインターネットで注文できるサービスも設けているので、日本全国に自分だけのそろばんを持つこどもたちが増えています。
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玉を移動させると数字を読み上げてくれる「ボイスそろばん」(提供 株式会社ダイイチ)
また、独自の工夫を加えた新しいタイプのそろばんもあります。2013年に発売された「ボイスそろばん」は、玉を動かすと自動的に数字を読み上げてくれる機能が付いていて、目や耳が不自由な人も使えて便利です。日本語だけでなく英語でも読み上げる機能もあります。
ゲーム機やスマートフォン用に開発されたそろばんソフトは、脳を鍛える道具としてそろばんを活用したい大人の人にも好評です。
算数の勉強が好きになれるだけでなく、新しい能力を引き出すトレーニングとして、そろばん学習の人気は長く続きそうです。
(2013年12月更新)