日本人は、きれいな文字を書くために、子どもの頃から「書道」を学びます。伝統的な筆記具の筆は慣れないとたいへん使いづらいですが、何度もトレーニングすることで、誰でも自分らしい表現を身につけることができます。優れた芸術として、書道の作品は展覧会だけでなく、看板、ポスター、衣服のデザインなど、いろいろな場面で目にします。観衆を集めて、ダンスなど激しい動きをしながら作品を完成させる書道パフォーマンスも人気です。
自分の作品を手に笑顔を見せる書道教室の子どもたち(白洲書道会 協力)
何度も書いて上達
筆を持つ前に、墨からインクを作る小学生の女の子(白洲書道会 協力)
夕方、東京都内の書道教室に、小学校帰りの男の子や女の子たちが集まってきました。子どもたちは、礼儀正しく先生にあいさつをすると、さっそく小さな固い墨(すみ)を水ですりおろしてインクを作ります。上手にインクができたら、机の上に紙をセットして練習開始です。子どもたちは、背中をピンと伸ばした良い姿勢で、手先だけでなく身体を使って書くと、上手な字が書けると教わります。一生懸命書き上げた作品はどれも、子どもたちの元気で素直な気持ちが紙いっぱいに表現されているようです。
書道は中国で生まれ、日本には6~7世紀ごろ伝わりました。漢字だけで表現する中国の書道とは違って、日本の書道は「かな」という日本だけにある文字の要素を加えて発達しました。
筆を持って練習する小学生の男の子(白洲書道会 協力)
書道で使う筆記具は、馬などの動物の毛を小さく束ねた筆です。インクをしみこませた筆の先は柔らかくて弾力があり、線を引くたびにかたちを変えるので、始めたばかりの子どもたちは、なかなか先生が書いてくれた字の見本をまねることができません。何度も書いてみることで上手になっていくのです。
集中力が身につく
子どもたちの作品を集めた書道展((財)日本書道教育学会 提供)
あいさつから始まる書道の訓練を通じて子どもたちが身につけるのは、上手な字を書く技術だけではありません。練習用のお手本を注意深く見ることによって、ものごとをしっかりと観察する力や視野の広さが身につき、消したり訂正したりすることができない真剣な作品作りによって、一つのことに集中する力や我慢(がまん)強さが養われます。加えて、日本人が優れていると言われる手指の器用さや、文字の線が書かれていない余白の美しさを感じて表現する日本人独特の美術的センスも身につくとも言われています。
こうした書道の基礎を学んでもらおうと、日本の小学校には「習字」という授業があります。