雷のような大きな音と、ステージ上の派手なパフォーマンスが、聴く人の心をわくわくさせてくれる楽器があります。日本の伝統的な打楽器「和太鼓(わだいこ)」です。お祭りやイベント会場をわかせる演奏者のかっこいい姿は、子どもたちの憧(あこが)れの的です。クラシックやジャズなどのジャンルの異なる楽器との競演も盛んで、活躍の場が世界に広がっています。
![演奏者の華麗なパフォーマンスも見どころの和太鼓のステージ(さいたま市で開かれた「太鼓祭」で)](images/taiko01.jpg)
演奏者の華麗なパフォーマンスも見どころの和太鼓のステージ(さいたま市で開かれた「太鼓祭」で)
完成までに5年
![全力で「長胴太鼓」をたたく小学生のチーム(「太鼓祭」で)](images/taiko02.jpg)
全力で「長胴太鼓」をたたく小学生のチーム(「太鼓祭」で)
日本の太鼓として広く知られているのは、くり抜いた丸太の両面に牛革を張った「長胴太鼓(ながどうだいこ)」です。「大太鼓(おおだいこ)」などとも呼ばれ、直径1㍍を超す大きなものもあります。和太鼓は、「バチ」と呼ばれる演奏用の木の棒で思いっきりたたくと、130デシベルというジェット機と同じぐらい大きな音だって出せます。外なら数㌔先まで音が届くので、昔は戦場で離れた場所にいる兵士たちへの合図に使われたりもしました。
![胴の表面をカンナでていねいに削って仕上げる和太鼓の胴作り(株式会社宮本卯之助商店の工房)](images/taiko03.jpg)
胴の表面をカンナでていねいに削って仕上げる和太鼓の胴作り(株式会社宮本卯之助商店の工房)
![ジャッキを使い、牛革を限界まで張って作られる和太鼓は、世界で最も丈夫な楽器の一つ。重い木づちで何度もたたいて音を調整する(株式会社宮本卯之助商店の工房)](images/taiko04.jpg)
ジャッキを使い、牛革を限界まで張って作られる和太鼓は、世界で最も丈夫な楽器の一つ。重い木づちで何度もたたいて音を調整する(株式会社宮本卯之助商店の工房)
太鼓の胴は、ケヤキや野球バットの材料として知られるタモなど硬い木で作ります。木を乾かしたり、皮を加工したりして、1個を完成するのに5年近くかかります。太鼓は、材料の木の樹齢(じゅれい)と同じぐらい長持ちすると言われます。直径45㌢の太鼓だと、300年近く使えるというのだから、驚きです。そして、伝統的な技法で作られた太鼓は、どんなに力を込めてたたいても、決して壊れないぐらい頑丈(がんじょう)です。
楽器として進化
和太鼓は、古くから農作物の豊作を神にお祈りするお祭りや、歌舞伎など伝統芸能での伴奏などに使われてきました。ステージの主役として登場するようになったのは、30~40年ぐらい前からです。日本各地で演奏チームが結成され、1975年には「鬼太鼓座(おんでこざ)」という団体が世界的に活動を始めました。以来、太鼓は欧米やブラジルなどでもブームを呼んでいます。北米だけでも1,000を超すチームが生まれているといいます。
日本の伝統芸能という枠から飛び出した太鼓は、オーケストラやロックのコンサートにも参加するなど、さまざまな音との競演を通じて、楽器としての進化を続けています。