マンガが火をつけた、競技かるたブーム
百人一首かるたは、読みあげられた上の句を聞きとり、下の句だけが書いてある札を取りあうゲームです。近代になって、百人一首かるたは、1対1で戦う「競技」としても発展してきました。競技かるたでは、百首ぜんぶを覚えておく記憶力はもちろんのこと、視力・聴力・集中力・スタミナのすべてが必要とされます。
競技をする人は、畳の上にならんだ札をにらんでふたりで向かいあい、読み手が声を出すやいなや瞬時に札を見つけて素早くとります。てのひらが畳を打つ「バシッ」という音がひびき、時には札が勢いよく空中をとんでいきます。競技かるたは、よまれた歌の優美さとは反対に、畳の上の格闘技ともいわれるほどはげしいものなのです。
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競技かるたを通して成長していく女の子・ちはやが主人公のマンガ『ちはやふる』。大ヒットし、競技カルタのブームをつくった
(©末次由紀/講談社)
最近、この競技かるたを題材にしたマンガ『ちはやふる』が登場し、大人気となっています。現在15巻を数える単行本は、あわせて300万部を売りあげる大ヒットとなり、テレビアニメにもなりました。物語の中では、ヒロインが、かるた仲間とのきずなを深めながら、厳しい競技に挑戦し成長していく姿がえがかれます。
取り札には半分の50枚を使い、25枚ずつをそれぞれの陣地にならべます。読まれる札は100枚のままなので、場に出ていない札も読まれるばあいがあります。競技者は出ていない札をすぐに判断し、まちがった札をとらないよう頭を働かせなくてはなりません。このような知的なゲーム性と、一瞬を争う反射神経を同時にもとめられるところに、競技かるたのおもしろさがあります。
![ちはやふる](images/004.jpg)
読み手が上の句を一音発しただけで、すばやくかるたを取る、主人公のちはや
(©末次由紀/講談社)
![全国高校選手権のようす](images/005.jpg)
全国高校選手権のようす。競技かるたの選手が目標にする、あこがれの大会だ(写真=読売新聞社)
そんなヒロインにあこがれ、自分でも競技カルタを始めたいと、各地の百人一首かるたクラブに入会する子どもたちも増えています。将来は、中学校や高校の部活動などでさらに練習し、全国選手権などの大会に出て戦うことを夢見ている人も多いようです。
歴史のふかい百人一首は、かるたというゲームになって、現代の日本の子どもたちの中にもいきいきと息づいているのです。
(2012年3月更新)