日本人の食生活の根幹をなす「米」と「魚」がタッグを組んで育まれた、「すし」という日本の食文化(源流は東南アジア、中国)の歴史は古く、その裾野は果てしなく広い。米の乳酸発酵による魚介類の保存食として生まれたすしは、気候風土、人びとの気質などを映し、魅力に富んだ多彩な伝統食として、今日各地方に残っている。その代表例が、滋賀県に古くから伝わる「フナ(鮒)ずし※1」である。半年ほど漬け込まれて乳酸発酵し、ウォッシュタイプのチーズのような香りをこってりまとったフナずしの薄片を一切れ、椀に入れ熱湯を注いで食すれば、複雑な佳味が心にしみ入る。