日本酒の文化
このように、われわれの祖先と共に歩み続けてきた日本酒は、誕生から葬儀に至る数々の人生儀礼を通して、日本人一人ひとりの生涯に常につきまとってきた酒でもある。そして飲んで酔うだけのものではなく、社会的な「けじめ付け」の手段としても役立ってきた。また、日常生活における日本酒の嗜み方や考え方は、日本の食文化の独自性をつくりあげる上で大きな影響を及ぼしている。例えば酒の肴や酒器(盃や徳利)の豊富さ、さらには「燗をつける」という、酒を温めて飲む固有の飲酒法である。これらからは、日本人がこの酒に対し、いかに愛着と誇りを持って接してきたかがとてもよくわかるのである。