驚異的なスピードで走る弾丸列車が颯爽と登場したのは、1964年。東京オリンピック開催の年である。開業したばかりの東海道新幹線で、0系と呼ばれる砲弾型の車両が運行を始めたのだ。当時、時速220kmで世界最速の名誉を得た0系は、その後、西へ延びた山陽新幹線でも長く活躍した。
全国への新幹線網の広がりとともに、車両が多様化してくるのは、1985年頃から。2階建て車両が登場し、車高は低くなり、先頭車両の形―新幹線の「顔」は、長く優美に変化していった。1990年代には、最高時速300kmを出す500系という車両が現れる。そして、2007年7月、東海道・山陽新幹線に、次世代車両、N700系が導入された。
N700系の大きな特徴は、加速がすばらしく(約180秒で時速270kmへ到達)、乗り心地が快適で、消費エネルギーが少ないことだ。開発には多くの最新技術が結集されたが、その一つに「車体傾斜システム」がある。この技術は、車体と車輪の間にある空気バネで、車体を内側へたった1度傾けると、カーブ走行時も速度を落とすことなく、時速270kmで走れるというもの。その間、乗客の乗り心地を損ねることもない。これで、東京―新大阪間の所要時間は5分縮まった。
また、鳥が羽を広げたような独特の顔「エアロダブルウイング」にも、重要な秘密が隠されていた。この形が空気抵抗を抑え、電力消費量を減らすことに一役買っているのだ。時速220km走行時に0系と比べてみると、なんと49%も低減した。さらには、人間工学的に計算された座りやすい椅子や、半分以上の座席に設置された電源、乳幼児の着替えにも使える多目的室など、隅々にもてなしの精神が感じられる。
全国の新幹線網は、現在も拡張中である。未来に向かって疾走し続ける新幹線は、今後どんな新しい「顔」を見せてくれるのだろうか。