東京と新大阪を2時間25分で結ぶ新幹線のぞみが“夢”の超特急とするなら、上野と札幌を約17時間かけて走るカシオペアは“憧れ”の寝台特急である。
銀色の車体にレインボーカラーのラインが特徴的なカシオペアが、上野駅の13番線ホームにゆっくりと入ってきたのは15時35分。出発時間の1時間ほども前だった。
ホームで待ち構えていた人たちのカメラのフラッシュが一斉に光った。カシオペアをバックに記念写真を撮ったり、車両に乗り込んで内装を写したり、みんな忙しげに写真を撮っている。
乗客だけではなく、いつかカシオペアに乗ろうと、写真を撮りにくるだけの鉄道ファンも多いのだ。
「撮ってもらっていいですか?」
一組の夫婦に声をかけられた。
「もちろんです」
車両の前で微笑む二人をカメラにおさめた。結婚10年目の記念にカシオペアに乗って札幌に行き、それから世界遺産の知床をまわってくるのだという。
「いつかはカシオペアに乗りたいと思っていて、それが実現してワクワクしています」
奥さんは、そう言って笑った。
この夫婦のように結婚10年目に、あるいは新婚旅行に、または長寿の祝いになど、何かの記念日だからこそカシオペアに乗るという人がほとんどだという。やはり“憧れ”の列車なのだ。