沖縄のすべての島々は、現在も発達を続ける海中のサンゴ礁に縁取られている。また、一部の島は、海底のサンゴ礁が隆起してできた。要するに沖縄は、全体がまさに「サンゴ礁の島々」なのである。
サンゴが生育しては死に、荒波で壊れては積み重なり、長い年月をかけてサンゴ礁の地形ができていく。すると、それは外洋からの波が砕ける砕波帯となって島を守り、白波は海中により多くの酸素を溶け込ませる。そうしてできたサンゴ礁の内側には、沖縄の方言で「イノー」と呼ばれる、波の穏やかな浅瀬の礁湖(ラグーン)が形成され、さまざまな環境がつくられる。そして、それぞれの環境に合わせて多様な生物が棲息するようになるのだ。
さらに沖縄の多くの島々では、黒潮が直接ぶつかる側や、流れのぶつからない部分などによって、成育するサンゴの種類やサンゴ礁の形態も変化する。こうしてできた複雑な地形がまた、亜熱帯の沖縄の海洋生物の多様性を支えているのだ。
沖合を流れる黒潮には、カツオやマグロ、マンタ(オニイトマキエイ)やジンベエザメなどが悠然と泳ぎ、島々の周辺はザトウクジラの繁殖地となっている。外洋との境目で生育を続けるサンゴの群落には、カラフルな熱帯魚が泳ぎまわる。亜熱帯生物の宝庫である沖縄には、200種以上の造礁サンゴと1000種以上の魚たちが棲息するとされ、毎年多くの新種の魚も発見されている。沖縄の多様な海中生物や、ダイナミックな海底地形を見ようと、毎年、日本国内はもちろん、海外からも多くのダイバーが集まってくる。
そして、海岸線とサンゴ礁の間の静かなイノーには、アマモなどの海草が生え、そこに稚魚や小さな生物がたくさん棲息する。ときには、草食の海牛類ジュゴンさえも姿を現す。また、沖縄の海はサンゴ礁だけでなく、西表島の亜熱帯原生林や、島から流れ出る川の河口域のマングローブの湿地、干潟、砂泥地のモ場といった多様な環境が形成される。ラムサール条約にも登録される湿地もあり、別の生態系に属する多様な生き物たちの姿が見られるのだ。
このように、沖縄の豊かな自然環境を後世に残していくのが、われわれ日本人の責務であることは間違いないだろう。