礼の心を包む折形


日本では、人に物やお金を贈るときは、むき出しのままではなく、紙や布に包んで渡すというマナーがある。その源にあるのは、600年ほど前に武家社会の礼法として始められた「折形」だ。これは、和紙を用い、儀式の飾りや贈り物の包みを、決まりに則って正しく折る作法だ。折形はまた、折紙遊びのもとになったともいわれる。

「現代の暮らしに合う新しいスタイルの折形を、教室や展覧会、本の出版などで提案しています」というのは、東京・青山で「折形デザイン研究所」を主宰するデザイナーの山口信博さん。礼の心を形にする折形でいちばん大切なことは、贈る相手を敬う心。折る前にはまず身の回りをきれいにし、雑念を払い、精神を集中させて一心に折る。折形は包む中身や儀式、季節によってさまざまな種類があり、中身が一目でわかるように包むのが原則だ。

「丈夫でしなやかな手漉き和紙は、どの向きからでもきれいに折れます。上質な和紙は、美しい折形を折るために、なくてはならないものなのです」

と語る山口さん。

折形は、日本人の心と和紙文化が生んだ美しい礼の形なのだ。

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