石原 日本では何でもかんでも、かわいいの一言で片付けてしまう状況がありますよね。たとえば、ファッションモデルのエビちゃん※1と、相撲取りの高見盛※2と、お笑い芸人のアンガールズ※3を同次元でかわいいと言ってしまう。それは面白いことだと思うんですよ。ただ、もともとかわいいというのは、赤ちゃんや動物に対して使う言葉だった。それがだんだん広がって、いろんな意味を持つようになった。だけど、赤ちゃんがかわいいというのと、キティちゃんがかわいいというのは近いですよね。

菅野 ええ、キティちゃんもドラえもんも二頭身で、丸くて、かわいい。

オバタ かわいいものが商品になることに気づいたのは、玩具メーカーでしょう。消費者の視点に立つと、かわいいものはデパートのおもちゃ売り場にあるものだった。その王道は動物のぬいぐるみだったんです。で、1967年のリカちゃん人形は、日本のオリジナル製品で、女の子の憧れを偶像化したものとして発売されたんです。

石原 リカちゃんをいいなと思って買った気持ちと、キティちゃんをかわいいと思って買うのとでは、大きな隔たりがあると思うんですけどね。その20年間に何があったのか?

オバタ キティちゃんの場合は、おもちゃじゃなくて、ファッションでしょう。幼年期にキティちゃんをかわいいと感じた人が、大人になっても素直にキティちゃんはかわいいと表現してもいいんだと、それが許される社会になったんですよ。

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