ファンが育てたハローキティ

サンリオ デザイナー 山口裕子さん


キャラクタービジネスのサンリオが、子ネコのオリジナル・キャラクター「ハローキティ」を生み出したのは1974年。翌75年春に発売されたキティのサイフが評判になり、数多くのキティ・グッズができたが、77年頃から人気は下降線をたどった。

当時のキティは、黒く太い線で輪郭が描かれていた。どんなグッズのキティも、足を投げ出して横向きに座り顔だけ正面に向けるポーズで、服もみんなオーバーオールだった。

このキティに変化を与えたのが、80年に新しくキティのデザイナーに起用された山口裕子さんだ。各地のサンリオ・ショップに出かけて、直接、女の子たちにキティに対する声を聞いてみると、みんな「いつも同じでつまんない」「冷たい感じがする」というのだった。

山口さんは、さっそくそれまでの太い黒線の輪郭をなくして、ふわふわした感じを出した。そして85年、テディベアを抱くキティを世に送り出し、大ヒットさせたのである。単なる子ネコのキャラクター、キティが、生きたアイドルのような存在に変化したのだ。

その後も、ファンの声に耳を傾け、「もっと大人っぽいキティがほしい」という声に、白と黒のモノトーンのキティを描いたこともある。最初のキティ世代の成長に合わせて、キティも進化させていったのだ。

「いわばキティはファンのみなさんが育ててくださったんですよ」

そう語る山口さんに、いまや世界に広がったキティの魅力を聞くと、

「キティには口を描いていないんです。口はいちばん表情を出しやすいですね。でもその口がないから、キティは見る人の思いによってどんな表情にも見えるんです。悲しいときは励ましてくれるし、嬉しいときは一緒に喜んでくれる。そこが魅力かなと私は思います」

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