読者の情熱が雑誌をつくる

『CanCam』の人気の理由は、なんといってもスターモデル。毎号表紙を飾るのは蛯原友里、通称「エビちゃん」だ。2003年から専属モデルを務め、最近では活動の舞台をテレビCMやドラマにまで広げている。『CanCam』でエビちゃんが着た服は、雑誌の発売直後に問い合わせが殺到し、即座に完売してしまう「エビ売れ」現象が起きることもしばしば。エビちゃん人気の爆発について『CanCam』編集長の大西豊さんが、こう語ってくれた。

「エビちゃんは、誰が見てもかわいいと思えるモデルです。同性からはもちろん、男性からも愛されています。成功するモデルは必ず、両方からの支持があるんです」

エビちゃんに限らず、『CanCam』の専属モデルたちは皆、女の子らしくて親しみやすい雰囲気を持っている。モデルであるからには、もちろんプロポーションは抜群だが、近寄りがたい美人はひとりもいない。読者も、高嶺の花ではない手の届く憧れの存在として、自分を投影しやすいのだろう。モデルに対する読者の思いは相当なもので、専属モデルが雑誌を離れる際の「卒業」イベントなどには、多くの読者が詰めかけるほどだ。

人気のもう一つの秘密は、読者との積極的なコミュニケーションにある。

「『CanCam』は、私たちが一方的に発信するだけの雑誌ではありません。読者と一緒につくりあげていく雑誌なんです」

と大西さんは言う。読者からのアンケート結果などを誌面づくりの参考にするのは当たり前。さらにはその声をもとに、ファッションメーカーと服づくりを一から企画したり、『CanCam』だけに掲載する限定商品をつくったりもしている。読者が「今、着たい」「明日、オフィスや学校に着て行きたい」と思う服、つまり「リアルクローズ」を、双方の交流から生み出しているのだ。

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