「素顔」の動物たちに会える行動展示

旭山動物園を訪れた人びとの多くが、「動物たちが生き生きしている」と感じることだろう。まずは、動物たちを幸せにするさまざまな工夫がなされた、いくつかの展示を紹介しよう。

散歩するキングペンギンをはじめ、4種類のペンギンたちが住む「ぺんぎん館」。ここには、プールの中を横断する人間用の水中トンネルがあり、泳ぎ回るペンギンたちの姿を水中から観察できる。ものすごいスピードで水中を「飛ぶ」姿は、あのヨチヨチと地上を歩く姿からは想像もできない。

水中の動物たちの生き生きした姿を見ることができる施設は、他にもある。「あざらし館」の大きな水槽につながった直径1.5mの円筒「マリンウェイ」。これはアザラシが上下に泳ぐ習性を利用したものだ。広い水槽があるのにわざわざこんな狭い通路を通るのか、という心配をよそに、アザラシたちは上から下から行き交い、時には止まってじっとこちらを見ていることもある。向き合っていると、反対に観察されている気分になってくる。

さらに、行動展示の工夫は、施設の奇抜さだけでなく、その見せ方にもある。毎日時間を決めて行われる「もぐもぐタイム」では、動物に餌をやりながら、彼らの驚異的な能力を垣間見ることもできるのだ。

巨大な2本のタワーがそびえ立つ「おらんうーたん館」の周りには、「もぐもぐタイム」の時間になると大勢の人垣ができる。オランウータンの「空中散歩」を見るためだ。飼育員の畠山淳さんが、オランウータンの習性などを説明しながら、反対側のタワーの下に餌を置く。するとオランウータンは、2本のタワーの間、地上17mの高さに渡された鉄骨を伝って、われわれの頭上をやすやすと反対側へ渡っていくのだ。人間とオランウータンの間にはネットも何もないので、落ちてこないかと、見ているこちらがひやひやする。

「オスの握力は500sもあり、今までに落ちたことはありません。その代わり、彼らは高いところでオシッコをする習性がありますから、特に真下にいる方は注意してください」と畠山さん。

ほかにも「もぐもぐタイム」では、それぞれの館でいろいろな試みがなされている。ホッキョクグマが餌をめがけてプールに飛び込む姿を、ガラス越しに観察できる「ほっきょくぐま館」も、大勢の人が集まる人気の場所だ。

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