日本のホテルのもてなしの基本は、どうすれば利用者にとって便利か、ということの追求にあるのかもしれない。日本の電気製品や自動車がそうであるように。
これは、帝国ホテルが初めてというわけではないが、客室に必ず備えてある浴衣(寝間着として使う)とスリッパ、さらに歯磨き、歯ブラシやシェーバーも、日本のホテルならではのもてなしだ。どの国のホテルもバスルームのアメニティには気を使うが、個人的な身の回り品である寝間着や歯ブラシまでは気を回さない。だが、最近、日本以外のホテルでもスリッパや歯磨き、歯ブラシを見かけることが増えてきたように思う。日本に学んだものに違いない。帝国ホテルに代表される日本のホテルのもてなしが、静かに、しかし確実に、世界のホテルを快適にしている。