日本の文化の土壌をつくり、茶道の背骨ともなっている仏教では、この世は「無常」と説く。常に変化の連続だというのである。また、すべてのものは「縁起」によって生じているとも説く。すなわち、すべての生きとし生けるものは、互いに関係し依存し合いながら存在しているというのだ。
だから、二度とないこの瞬間の出会いを大切にしようとする。それが「一期一会」の精神である。
千利休は、茶道の心を四つの漢字で表した。『四規』と呼ばれる「和敬清寂」の4文字である。この意味は、「互いに心を開いて、敬い合い、常に清らかに何があっても動じない心をもとう」ということだ。
茶室では、客は常に正しい。正座ができなければ、胡座で茶をすすろうが、一口で飲み干そうが自由なのである。これは、旅館でも変わらない。いやもっといえば、客の気ままを許す心が、日本のもてなしの心だといえる。
そこに生まれる互いを敬う気持ちが、客の節度をつくり、同時に日本のもてなしの質を高めてきたのである。