最強ロボットにかける情熱

「不知火」製作者 萩原佳明さん

 軽快な機械音をさせながら実に敏速に動く。直進、横歩き、回り込み……。止まったかと思うと、右手を頭の上にあげ、一気に真下に振りおろした。まるで空手家そのものだ。

「これが不知火の得意技の『瓦割り』です」

「不知火」の生みの親である萩原佳明さんは言う。小学校時代から「ガンプラ」(人気アニメ『機動戦士ガンダム』のプラモデル)づくりに熱中していた萩原さんは、いつか自分で、ロボットをつくってみたいと思っていた。それで工業高校に進み、就職もモーターのメーカーに決めたのだ。

 そんな萩原さんが実際にロボットをつくり始めたのは、「ロボワンに出場しているロボットを見て、自分でもつくれそうだと思った」からだ。「ロボワン」は、2002年に始まった二足歩行ロボットの格闘技大会のことである。

 自分で自分の足の動きや腰の動きを研究しながら、手探りでつくり始めた。強く見せようと外装にも気をつかった。そうして、満を持して出場した第4回ロボワン。「不知火」の外装のカッコよさが評判を呼んだ。この大会以後、多くのロボットが性能はもとより、外装にもこだわるようになったそうだ。

 毎日、会社から帰ると「不知火」を調整するのが最高の楽しみだという萩原さん、「わが子を育てるような気持ちですよ。ロボットづくりに、いちばん大切なのは愛です」と笑った。

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