素材の選び方と調理法
 国によって獲れる魚はさまざまに違いますが、マグロのような大きい魚は、まず生食に適した魚といえるでしょう。小さな魚、なかでもイワシなどの背の青い魚は傷みやすく、よほど新鮮でないと日本人でも生では食べません。また、マグロは血液中の鉄分が多く、アミノ酸の発酵が遅い点でも生食に向いているといえます。
 魚のタンパク繊維は肉に比べて短く、微生物が増殖しやすいため、生魚は0℃前後で保存し、ウロコや内臓の下処理を丁寧に行う必要があります。実は、この下処理は、材料の鮮度以上に大切なことなのです。また、魚を処理する際には、包丁ばかりでなく、手やまな板、包丁の柄などを清潔にすることはいうまでもありません。
 寿司に用いられる魚は、生のままで用いるもの、塩や酢で〆るもの、煮たり焼いたりするものの3種類に分けられます。生のまま用いる主な魚介類は、マグロ、タイ、クルマエビ、イカ、スズキ、ハマチ、ヒラメなど。背の青い魚は、中毒やアレルギーを起こしやすいので、たっぷりの塩で下処理してから用います。
 最終処理の段階まで人の手が生魚に触れる寿司は、刺身以上に注意が必要です。料理人の手の衛生状態、ひいては調理場全体がきちんと管理されていて初めてできるのが、生魚の握り寿司なのです。
 食はまず、安全であって初めて成り立つものです。世界じゅうのみなさんに、日本料理のすばらしさ、わけても魚に対する英知の奥深さについて知っていただき、自然の魚から得られる食の深みを、ぜひ体験していただきたいものです。(談)

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