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もうひとつの代表的なだしの材料はカツオ節だ。初めて見た人は、これがカツオから作られた食べ物だと想像できるだろうか。世界一硬い食品といわれるカツオ節は、お互いをぶつけるとカーンと乾いた高い音がする。
カツオ節でだしをとるには、専用の削り器で薄く削ったカツオ節を、煮立ったお湯に入れてすぐに火を止めるか、煮立つ直前の湯に入れて沸騰したらすぐに取り出す。これが「一番だし」で吸物などに使われる。一番だしで使ったカツオ節に水を加え、さらに煮出してとる「二番だし」は、煮物や味噌汁などに幅広く使われる。
カツオ節は本来、料理のたびに削っていたが、現在では削り節をパックしたものを使うのが主流になっている。
「カツオ節は削りたてが味も香りもいいんです。いい素材から作られたカツオ節を使って本物を味わってほしい」と中野さんは力説する。
そんな中野さんが期待をかけるカツオ節の作り手が、全国一のカツオ節の生産地・鹿児島県枕崎市の久保智英さんだ。久保さんのカツオ節作りは約10人の従業員とともに朝6時過ぎから始まる。
まずカツオを三枚におろし、籠にきれいに並べ、身に割れ目が入らないように約90℃の湯でじっくり煮る。そして骨を抜き、形を整える。薪を燃やして燻し、常温で冷ます作業を何回も繰り返して乾燥させる。これでできたものが「荒節」といわれ、おもにパック詰めにされた削り節の材料になる。「荒節」を天日干ししてから、表面のタールを削り整形したものが「裸節」。そして、最後はカビ付けの工程に入る。干した「裸節」を温度と湿度を管理したカビ付け倉庫に入れ、カビが付いたら天日干しし、カビを払って再び倉庫に戻す。4回ほど繰り返したものが「本節」だ。
このカビは麹カビの一種だが、カツオ節の中の水分をどんどん吸い取ってくれるので、乾燥した硬いカツオ節ができるのだ。同時に、カツオが含んでいる脂肪分を分解したり、うまみの主成分であるアミノ酸をカツオ節に蓄積させたりする。
本節作りは手間がかかり、6カ月は必要だ。生産性を考えると割に合うものではないという。それでも久保さんが本節にこだわるのは、「安いカツオ節が出回るなか、伝統ある技術を駆使して本当においしいカツオ節を作り続けたい」からだという。
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