味噌は、醤油と並ぶ代表的な調味料で、かつては多くの家庭で手作りされていた。毎日食卓にのぼる味噌汁をはじめ、魚や肉の臭みを消して味にコクを増すことから、鍋物や煮物などにもよく使われる。
 味噌は大豆の発酵調味料だ。蒸した大豆と塩を、大豆や米、麦などの麹カビと混ぜ合わせ、数カ月から1年にわたり発酵、熟成させると味噌ができる。中国から日本に味噌の原型が伝わったのは、1300年以上も前といわれるが、日本各地でさまざまな味噌が造られてきた。米麹を使った米味噌、麦麹で仕込む麦味噌、大豆だけで造る豆味噌などがあり、なかでも米味噌がいちばん多く使われている。
その米味噌も地方によって特徴がある。寒い地方では塩分が多く色の濃い味噌が好まれ、温暖な地方では塩分の薄い甘口の白い味噌が好まれる。市販の味噌で全国的に販売量が多いのが、長野県各地で造られる「信州味噌」だ。全国の味噌生産量の30%以上を占める。淡色辛口の比較的さっぱりとした味で、他の種類の味噌とも合わせやすいといわれる。
「信州(長野県)の味噌が美味しいのは、澄んだ水と空気があって、四季がはっきりしていて寒暖の差が大きい、山に囲まれた信州の気候が、味噌造りに最適だったからでしょうか」
 こう話すのは、長野県安曇野の丸山味噌醸造店の四代目、丸山貴士さんだ。今も100年前の創業当初と同じ方法で味噌造りをしている。地域の農家と契約して栽培してもらった大豆を、ガスや石油などのボイラーを使わず、初代が作った竈で薪を焚いて蒸すという徹底ぶりだ。
「薪の火は柔らかいので、大豆の風味を壊さない気がするんです。規模の小さい店だからできることですが……」
 と、丸山さんは笑う。丸山味噌を“わが家の味”として使ってくれる常連の顧客のためにも、変わらないことにこそ価値があると考えている。

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