素材の切り方と盛り付けの深い関係
 「箸で食べることを念頭において、素材の切り方も決まっていった」と村田さんは言う。つまり、日本ではナイフを使わずに箸だけを使って食べるので、あらかじめ食材を食べやすい大きさに切り えておくことが必要になる。ここから「素材は1寸(約3cm)に えるという基本の切り方につながった」と説明する。
 村田さんによれば、口の中の容積から考えると、3×2×1cmが食材を最もよく味わえる大きさだという。そのため刺身は、この大きさに切るのが基本だ。また、繊維を噛み切ることでその独特の風味や食感を味わえるタケノコなどは、1寸ではなく2寸に切る。そうすることで、自然に二口で食べるように仕立てられているのだ。
 日本のもてなし料理の基本である懐石(茶の湯で出される料理)では、刺身を盛る器を「向付」と呼ぶ。古来、日本では奇数が縁起のよい数とされ、盛り付けの基本も奇数。つまり、刺身を5切れ盛るなら、向付の大きさも自ずと決まってくる。刺身につける醤油を入れる小皿も、必然的に刺身一切れが入る大きさになる。
「一見、食器の大きさはばらばらに見えますが、その目的に合った大きさの食器を用意しているのが日本料理の特徴なのです」
 料理の盛り付け方も、食べやすいよう理にかなっている。右手に箸を持って食べることを前提に、盛り付けは右から左へというのが原則。また、箸で取りやすいように手前を低く、奥になるほど高く盛り付ける。一匹丸ごと調理した魚を皿に盛るときは、厚みのある背が向こうで腹が手前。そして頭は左にする。これは左手で魚の頭を押さえ、右手の箸で食べやすくするためだ。
 また、料理の色彩は5色が基本。自然の中の食材は、緑、黒、赤、黄、茶からなるものが多い。これらを組み合わせることで日本料理独特の配色の美が生まれ、同時に栄養のバランスもきちんと取れる。日本料理の美しさは、外面的なものだけではなく、理にかなったものだからこそ目に訴えかけてくるのである。

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