生きている富士山
 日本列島は、太平洋プレート、北米プレート(オホーツクプレートとする説もある)、フィリピン海プレート、アムールプレート、南海マイクロプレートという5つのプレートの上に乗っていると考えられている。それらが衝突し合ったり潜り込んだりしているために、日本は世界でも有数の地震・火山国なのだ。日本列島のほぼ中央部に位置する富士山は、そのうち3つのプレートが交差するほぼ真上のあたりにそびえ、大規模な噴火を繰り返してきた。
 現在の富士山は、2つの古い火山の上に成立している。今から1万年ほど前、標高3000m級の「古富士火山」が大量の溶岩を四方に噴出し始め、以後数千年の間に古富士火山自身と、そのすぐ北東にあったさらに古い火山の「小御岳火山」を呑み込むようにして富士山の原型が誕生。その後も続いた噴火が、あの美しい円錐形の山体を完成させた、というわけである。
 富士山の噴火活動はその後も休みなく続き、9世紀から11世紀までの300年間は、富士山が最も活発に活動した時代となった。なかでも864年、北西斜面で噴火した「貞観の大噴火」は、有史以来最大の溶岩流出を引き起こした。この噴火により北側の山麓地形は一変し、広大な青木ヶ原や新たな湖を誕生させた。
 12世紀以降、大噴火はしばらくなくなった。しかし15世紀中頃から再び活発な活動期に入り、1707年には「宝永の大噴火」が発生。南東斜面に3つの火口が開く大爆発となったその噴火は、麓の村々と田畑に大被害をもたらしたばかりでなく、東に100qほど離れた大都市の江戸(現・東京)にも大量の火山灰を降り積もらせた。
 以後、富士山は300年間近く沈黙を守っている。しかし、その誕生から死まで10万年単位の時間をかける火山では、300年という期間は一瞬にすぎず、いつ噴火しても不思議ではない。富士山は今も確かに生きている現役の火山なのである。

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